2011 Fiscal Year Research-status Report
17-19世紀インドにおけるイギリス植民都市の比較社会史研究
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23652171
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Research Institution | Kyushu Institute of Technology |
Principal Investigator |
水井 万里子 九州工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (90336090)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | インド植民都市比較社会史 / 東インド会社 |
Research Abstract |
本研究課題はインドの植民都市社会の継続性と変容を、「職業」「教育」「言語」の三点を柱に比較検討することを目的とする。イギリス東インド会社による植民が行われた都市(カルカッタ、ボンベイ、マドラス)と、オランダ東インド会社による植民が行われた都市(プリカット)とを比較検討し、その建設期から近代末までを、18世紀半ばの統治体制の転換の前後を接合しながら長期的に検討することが重要な課題となる。上記植民都市社会における白人と現地人の混交・分離の問題を、東インド会社史、イギリス帝国史、西南アジア史の三様の立場にある研究者が共同・越境する形で分析・議論する。その際、お互いの資史料文献情報を十分共有できるよう17-19世紀の対象都市について合同史料調査・研究読書会を通じ共通の知の基盤を構築する。 この目的に沿って、23年度はイギリス、オランダの文書館を中心に英蘭東インド会社史料、植民地期の都市の統治関連史料について、現地で下記の史料閲覧・収集を中心とする合同史料調査を行った。主に[東インド会社管区における行政職員関連史料][東インド会社行政職リスト][オランダ関連史料 1586-1824][混血児、孤児の教育関連史料 1685-1835]の調査を実施した。 この際に各研究者が専門とする史料群の史料論的な把握や所蔵状況についての情報共有が、実際の史料を眼前にして進められた。本課題の意義のひとつに、狭い研究領域のみで使われる関係の史料を、情報共有を通じてより広い実証研究で利用できるよう存在を可視化していくことがあげられる。23年度はこのような試みを海外で実施したことで史料論的に大きな進展をみた。 国内においては研究会で各研究者が自身の実証事例や最新の研究動向を紹介し、この結果を国内外で公刊し、植民都市研究の展開に大きな意義があった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
23年度は予定通りイギリス、オランダの文書館での合同史料調査を実施し、情報共有によって史料論的知見が飛躍的に深化したことが大きい。研究目的を記した段階で予想されたことではあったが、これまで比較的狭い研究領域で個別に利用されてきた史料群が、より広い分野で利用可能な素材として可視化されたことで、比較史としての可能性が拡大した。 また、研究会では各人が実証事例を持ち寄り、最新の研究動向もあわせて紹介したことで、個別研究の現場から比較の視座へと参加者の研究姿勢が大きく変化したことも大きな成果としてあげられる。このような場を経て、23年度は参加研究者による国内外での公刊、口頭発表がなされ、イギリスでの著作出版や国際会議での発表、インド植民都市に関する事例から比較都市史における重要な論点「市壁」の問題を追求した論文等が発表された。 23年度のイギリス、オランダの史料調査が予定より長期に渡っため、アジアでの合同史料調査と実地検分については、24年度に実施することとした。このため、今後のスケジュールのアレンジは必要であるが、調査、情報共有、出版という3つの主要課題を遂行したという意味で、順調に計画が進展したと評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はアジアでの合同史料調査・実地検分をインド(ポンディシェリ、チェンナイ、ムンバイ)、マレーシアのペナンで実施する予定で、情報共有をさらに深めていく。比較の対象を当初の予定より東南アジアを視野にいれたものに拡大し、インド植民都市という地理的に限られた空間の比較研究だけではなく、アジア史や帝国史といったより広い分野で議論を展開する実証基盤を形作ってみたい。 国内での研究会活動を通じて、23年度に実施したような最新の研究成果を持ち寄ることにより、公刊される論考の背景や幅を広げていくことも本課題の成果につなげていくことができる。連携研究者による海外での複数の成果について公刊前にその内容を把握することができたため、海外の研究動向の展開をリアルタイムに取り入れることができたのも、越境型の本課題の特徴である。 この交流活動を続け、今後2年間は情報共有をはかる参加研究者の数を増やし、諸プロジェクトの交流を積極的に進めながら、西洋史、南アジア史、帝国史といった枠を超えた研究基盤となるよう本課題の推進をはかっていく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
海外(アジア:ポンディシェリ、チェンナイ、ムンバイ、ペナン)合同史料調査・実地検分に係る海外旅費を使用する予定である。本調査は23年度に予定していたものであるが、24年度に実施することとする。このため、23年度の基金分、24年度予算、25年度予算の前倒しを受けて、主として上記海外旅費として使用する。 また、年度内に北九州、京都で実施予定の国内研究会、関連する諸プロジェクトのイベントの交流に国内旅費が発生する。 23年度に集めた史料に関連して、さらなる史料収集の必要が生じた場合は、複写・現像焼き付けに関わる費用として予算を使用することも予想される。 史料・資料情報の共有を図るために23年度からIpadを各研究者が利用しているが、その通信費用も定期的に発生する。 図書の購入、PCの購入も必要に応じて発生する場合がある。
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Research Products
(7 results)