2011 Fiscal Year Research-status Report
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23652174
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
岡村 秀典 京都大学, 人文科学研究所, 教授 (20183246)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森下 章司 大手前大学, 総合文化学部, 准教授 (00210162)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 国際研究者交流 / 中国 |
Research Abstract |
本年度は、これまでに調査した後漢鏡の写真をデジタル化して整理した。また、新たに調査したのは、つぎのとおり。(1) 7月に大阪大谷大学博物館において、研究代表者の岡村と研究分担者の森下章司は紀年銘鏡をふくむ後漢・三国代の鏡を調査した、(2) 9月に岡村・森下と連携研究者の向井佑介は中国の上海・浙江を旅行し、おもに後漢鏡を調査した、(3) 3月に岡村と森下は台湾の台北を訪問し、荘静芬氏の所蔵する後漢・三国鏡などを調査した。なかでも紀元後1世紀末における淮派の「杜氏」・「石氏」と呉派の「柏氏」・「周氏」の盤龍鏡と画像鏡、さらには2世紀末における呉派の「張元公」の神獣鏡について多くの新出資料を入手し、それぞれの鏡工がいかに独自の作風をうちたてていったのか、そのプロセスを明らかにすることができた。とりわけ、これまでは淮派と呉派とは活動地域と作風を異にする同時期の二大流派としてとらえてきたが、それぞれの流派において各鏡工は独立した作鏡活動をおこなっていたこと、淮派における80年代の「青盖」盤龍鏡が呉派の盤龍鏡に直接影響を与えたこと、逆に呉派の画像鏡は80年代に成立し、90年代に淮派における画像鏡の成立に大きく寄与したが、淮派の「石氏」画像鏡に直接の影響を与えたのは呉派の「周氏」であること、つまり、各鏡工は自立した作況活動をおこなっていたゆえに、流派をこえた影響関係も、個人の関係によって生成したことを明らかにした。また、「張元公」はもともと呉郡の鏡工で広漢派の創出した環状乳神獣鏡にならった鏡を制作していたが、その後に呉郡から離れて工房を打ち立て、独自の同向式神獣鏡や重列式神獣鏡を創作していったことを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
上海と浙江省の現地調査において、未発表資料をふくむ多数の後漢鏡を精査し、当初の目的である1世紀末から2世紀初めの作鏡者だけでなく、2世紀末に「張元公」が制作した神獣鏡を検討したことによって、三国時代への展開が見通せるようになった。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度の成果をふまえ、2世紀初めから2世紀後半にかけての淮派から徐州系への鏡工人の展開に焦点をあて、江蘇省と安徽省の現地調査を実施する。また、国内所蔵資料の調査も実施し、資料の蓄積に努める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度も研究費のほとんどを資料調査に使用する予定であり、海外旅費と国内旅費がその主要な内訳となる。
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