2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23652175
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
新里 貴之 鹿児島大学, 埋蔵文化財調査センター, 助教 (40325759)
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Keywords | 南西諸島 / 沖永良部島 / 洞穴遺跡 / グスク系土器 / ウシ骨 / オオムギ / 祭祀遺跡 / 学際的研究 |
Research Abstract |
平成25年度は,沖永良部島の鳳雛洞および大山水鏡洞の調査研究報告書作成を行なった。 鳳雛洞第4洞口遺跡の性格として,グスク時代(中世並行期)の洞穴祭祀遺跡の可能性が高いことを明らかにした。その理由としては,日光の差し込まない洞穴奥部に遺跡が形成されていること,洞穴内がかなり狭く平坦部がほとんどないこと,水量に乏しいこと,遺物数が少ないこと,遺物組成に乏しいこと(ほぼグスク系土器・カムィヤキに限定されている),などから恒常的な生活領域としては不向きであり,長期的な利用が確認されないことが挙げられる。また,土器に一定の廃棄パターンがみられること(分割され,一方はそのまま壁などに立て掛け,一方はさらに分割して並べる),南西諸島で通有にみられるような食料残滓としての海産貝類が全く見られず,そのかわりに解体痕のないウシ骨が洞内に散在していること,この時代にはコメ,オオムギ,コムギ,アワ,キビなどが出土するが,洞内の炉のひとつからは炭化穀類としてオオムギのみが高密度で確認されている。また,土器の煤,炉の炭,ウシ骨の放射性炭素年代測定結果は,11~13世紀代で,これまで不明であった奄美諸島グスク時代の様相が明らかとなるとともに,同地域の極めて珍しい農耕開始期の祭祀遺跡として判断された。 大山水鏡洞第1洞口では,鳳雛洞第4洞口遺跡と同様の時期と考えられるが,遺物数や遺物組成の豊富なこと,水源が豊かであること,洞穴内に大きなホールが存在することなどから,鳳雛洞第4洞口遺跡と異なる生活の場として認識された。 沖永良部島に所在する洞穴は200以上存在することがわかっているが,グスク時代において,ふたつの異なる性格を持つ遺洞穴跡の存在が実証されたことを示し,沖縄諸島久米島にも土器と炭化穀類が多量に出土する洞穴遺跡があることから,洞穴内の農耕祭祀は南西諸島通有の事象である可能性が高まった。
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Research Products
(21 results)