2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23652176
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Research Institution | Research Institute for Humanity and Nature |
Principal Investigator |
石丸 恵利子 総合地球環境学研究所, 研究部, 研究員 (50510286)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 考古学 / 動物遺存体 / 安定同位体 / 資源利用 / 交流 / 流通 / 環境 / 文化財科学 |
Research Abstract |
本研究の目的は、日本列島の人の移動および交流・流通研究を進展させるため、遺跡から出土する貝類の産地同定方法を確立し、海産貝類の運搬をとおした視点「日本列島 貝の道」の解明を目指すことである。 まず本年は、貝類遺存体のデータ収集に重点をおき、西日本を中心とした約70遺跡から出土した主要な貝類すなわち各遺跡に持ち込まれて利用された貝類のデータ集成をおこなった。これらの作業によって、各地の豊富な海産資源、また地域や沿岸部の海域環境によって各遺跡における主要な利用貝類を把握することができた。また、内陸部に運ばれた海産資源(海産貝類・魚類)についても一部出土資料を収集し、縄文時代から近世の長きにわたり、列島各地で海産物が遠隔地に運ばれた実態を理解することができたといえる。 また、貝類の産地推定については、安定同位体分析を利用した方法を試行するため、測定資料の抽出(試料の採取や分解などの前処理)を開始した。しかし、こちらの作業については、本年中に有効な処理方法の確立が出来なかったため、それに伴う分析用の貝類資料の提供依頼のためのサンプリング調査は、予定通り進めることが出来なかった。 しかしながら、本年は出土資料データの収集によって、貝類の運搬に伴う人の移動および交流、資源の流通を考察するための基礎的な情報を充分蓄積することができたといえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の開始時期に拠点場所の移動が生じ、貝類の産地同定のための実験作業を円滑に進めることが困難となった。そのため、それらの活動に十分な時間が得られず、今年度中に計画を予定通り遂行することができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、貝類の産地推定方法の確立を早急に進めることに最重点をおく。また、これまでに収集した遺跡出土データより、実際に産地推定を試みる有効な遺跡を選択し、それらのサンプリング調査も実施する。さらには、出土データの補足や貝類利用についての考察を深めることも重要な研究課題である。 また、本年十分でなかった成果発表(貝類の産地推定方法の紹介、出土データからみた貝類利用の実態報告等)も今後は積極的にすすめ、本研究の意義ある完了を目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
これまでの作業で、分析に伴う備品(工具等)物品の整備は整ったため、次年度は実験に係る旅費(成果発信のための学会・研究会参加含む)と、分析を円滑にすすめるための実験補助の人件費に十分な研究費を使用する計画である。その他の費用としては、図書および事務用品の購入を予定している。
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