2013 Fiscal Year Annual Research Report
高齢者のライフヒストリーにみる空間/場所の経験-「高齢者の地理学」への挑戦-
Project/Area Number |
23652182
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Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
吉田 容子 奈良女子大学, 人文科学系, 教授 (70265198)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
影山 穂波 椙山女学園大学, 国際コミュニケーション学部, 教授 (00302993)
本岡 七海 (稲田 七海) 大阪市立大学, 都市研究プラザ, 研究員 (70514834)
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Keywords | 高齢者 / ライフヒストリー / 空間/場所の経験 / 地域アイデンティティ / 福祉サービス |
Research Abstract |
本研究の目的は,京阪神大都市圏内の都市部・郊外および過疎地域等において高齢者インタビュー調査を実施し,インフォーマントの地域アイデンティティの構築過程を描き出すとともに,各調査地域の自然的・人文的環境や高齢者の属性の違いをふまえながら,地域社会の中で高齢者が生活していくために必要なコミュニティ形成や福祉サービスのあり方を検討することである。25年度は,これまでの調査に引き続き,次の2地域を中心に調査を行った。 1)京都府相楽郡和束町:同町内では1990年代末頃から,高齢者間のコミュニケーションを図ることを目的に,地元ボランティアのサポートによって,「サロン」とよばれる高齢者のコミュニケーショングループが組織された。現在町内には17のサロンがあるが,本研究では,とりわけ活発な活動を続けてきた園地区のサロンに着目した。このサロン立ち上げ当初からボランティアとして関わってきた女性が,自身が高齢になった現在も,サロンの運営・活動を生きがいに,大きな役割を果たしている。 2)和歌山県新宮市:同市の部落解放同盟女性部が組織化されて30年が経過した。この間,当該地域の女性たちによる政治への積極的な参加によって,子育て支援や困窮高齢者支援をはじめとする多様な福祉的課題に対応しうるコミュニティづくりが進められてきた。しかし最近,中心的メンバーの高齢化から,活動を担う女性の世代交代があった。本研究では,かつての中心メンバーであった女性からライフヒストリーを聞き取り,彼女が女性部の活動(のちに活動の一部は,同市のコミュニティワーカーの仕事として行われる)をつうじて当該地域で自己のアイデンティティを形成していった過程を追った。 上記の両調査から,地域の諸活動をつうじて形成された女性の地域アイデンティティが,「地域に根ざして生きる」高齢者の「いま」に大きな影響を与えていることを実証することができた。
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