2011 Fiscal Year Research-status Report
景観の図像化プロセスの解明とナビゲーションツールとしての案内地図への応用
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23652184
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Research Institution | Toyama University of International Studies |
Principal Investigator |
助重 雄久 富山国際大学, 現代社会学部, 准教授 (40235916)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
須山 聡 駒澤大学, 文学部, 教授 (10282302)
浦山 隆一 富山国際大学, 現代社会学部, 教授 (10460338)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 景観 / 図像 / 風景印 / ナビゲーション / 観光 / 案内地図 |
Research Abstract |
本研究では、理論的研究にあたる景観の図像化メカニズムを研究分担者の須山が、応用的研究にあたる案内地図の分析を研究代表者の助重と分担者の浦山が担当している。研究初年度である平成23年度においては、理論的研究、応用的研究の基礎となるデータ収集とデータベース構築を進めるとともに、それらの分析結果に関する中間報告を行うことに主眼をおいた。 須山が担当する理論的研究においては、景観の図像化メカニズムの分析素材となる郵便資料(風景印)の収集を行った。対象は、島嶼部の郵便局に設置された325の風景印とし、これらに描かれた図像に「島らしさ」がどのように表象されているのかについて集計的な分析を行うとともに、記号論を援用した分析を行った(須山,2012)。 一方、助重・浦山が担当する応用的研究においては、石川県金沢市、富山県高岡市、京都市等の公共空間に設置された観光案内地図の現地観察・撮影を行い、案内地図の位置・構造・地図の歪み・スケールと方角・イラストレーションなど諸要素の特徴のデータベース化を進めた。うち一部については試論的な分析を行い、「わかりにくい地図」のわかりにくさを生み出す要因が、概ね(1)同一観光地内における制作・設置者が異なる地図の混在、(2)同一観光地内における表示方位が異なる地図の混在、(3)同一案内板内での表示方位が異なる地図の混在、(4)スケールと観光客の行動範囲とのミスマッチ、の4類型に分けられることを解明した。一方「わかりやすい地図」については、制作・設置者である自治体の意図や取り組みを、地図・案内サインの統一化を進めている金沢市の事例をもとに考察した(助重・佐竹,2011)。現地調査には研究代表者のゼミで観光案内の改善に関する研究に取り組む学生(佐竹)を同行し、学生の視点から見た観光案内地図の「わかりやすさ/わかりにくさ」に関する意見も積極的に取り入れた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
景観の図像化メカニズムの分析に関しては、風景印の収集が円滑に進んだことから、データベースの構築や基礎的な分析も進み、中間報告(雑誌論文の公表)に至った。 案内地図の分析は助重・浦山の本務校から近い石川県金沢市、富山県高岡市について地図画像の撮影やデータベース化や分析が円滑に進んだ。一方、京都市における「観光案内標識アップグレード」の調査については、現地における地図画像の撮影や市役所担当課へのヒヤリングが遅延したことで、地図画像のデータベース化や分析も遅延している。主な理由は(1)東日本大震災の影響で平成23年度助成金の交付時期が遅れたのに伴い、現地調査の実施が遅れたこと、(2)京都市の「観光案内標識アップグレード」計画自体も震災と観光客減に伴う観光事業の抑制等で約半年遅れ、モデル地区への試行的設置が平成24年度末にずれ込んだこと、があげられる。 また、研究全体の統括に向けた打ち合わせを兼ねた研究代表者・分担者全員での現地合同調査(計画段階では沖縄県那覇市で予定)も、それぞれの研究・教育業務の都合で日程が合わず、実現できなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
景観の図像化メカニズムの分析に関しては、引きつづき景観テクスト論・記号論を適用し風景印を中心とした郵便資料の分析を深めていく。具体的には、郵便資料に描かれた図像からイコン・インデックスなどの記号化プロセスを把握するとともに、図像に表れる呈示・隠蔽・誇張といった操作上の効果を見いだし、これら一連のプロセスをモデルとして提示する。また、郵便資料に図像化された元の景観を現地で確認、観察する必要があることから、現地調査も進めていく。 案内地図に関しては、見た人にとってのわかりやすさとデザイン性の両立を目指し、案内地図や案内サインの統合的なリニューアルを図る都市が増えてきた。とくに福岡市と鹿児島市では九州新幹線の開業を意識して大がかりな案内地図・サインのリニューアルを実施したことから、両市も研究対象に加えることとした。これら2市と従前から研究してきた都市について、制作・設置者である自治体の意図やコンセプトの差異、公共空間に設置された案内地図の位置・構造・地図の歪み・スケールと方角・イラストレーションなどの諸要素の特徴を比較・分析することで、「わかりやすい案内地図」に求められる条件を究明していく。 研究全体の統括に向けた研究代表者・分担者全員での打ち合わせは、現地合同調査の実施にこだわらず、平成24年度の早い時期に実施し、研究全体のすり合わせ、理論・応用両研究の調整を図ることとしたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究には現地調査が欠かせないため、平成24年度における研究費の主たる用途は旅費となる。また、現地での景観撮影・データ収集や、その後のデータ入力・資料整理を円滑に行うには学生のアルバイトが必要なため、謝金も必要となる。 「今後の研究の推進方策」にも記載したように、景観の図像化メカニズムの分析に関しては、郵便資料に図像化された元の景観を現地で確認、観察する必要があることから、現地調査の旅費が必要となる。一方、案内地図の分析に関しては、福岡市・鹿児島市(新規対象地)と京都市(昨年から継続)の現地調査に旅費が必要となる。また、案内地図の方位や地上高、目線から見た高さや角度を現地で実測するには、現地での補助者が必要なことから学生のアルバイトを最低1名同行させる必要がある。このため、学部学生の現地交通費も含め、現地調査とその後のデータ入力・資料整理に関わる謝金が必要となる。また、研究全体の統括に向けた研究代表者・分担者全員での打ち合わせは、助重・浦山の本務校または、須山の本務校(または、その周辺)で行う必要があることから、出張旅費が必要となる。 風景印として図像化された元の景観や案内地図が示す範囲を正確に把握するためには地形図等の地図類が不可欠である。また写真・数値データなどの整理・保管には、カラープリンタのインクやファイル・文具等の事務用品が必要となる。これらについては消耗品費で購入する。
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