2012 Fiscal Year Research-status Report
現代日本社会におけるグローバル化する性産業についての文化人類学的研究
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23652189
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
田中 雅一 京都大学, 人文科学研究所, 教授 (00188335)
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Keywords | セックスワーク / 売買春 / ジェンダー / セクシュアリティ / 移民 / 社会運動 / 労働 / 仕事 |
Research Abstract |
2012年度は本プロジェクト2年目となる。1年目に続いて、日本のセックスワーカーのインタビューを続けた。1回かぎりに終わらせないで、繰り返しインタビューを続けることを心がけている。 海外調査については、インド・コルカタで7月に開催されたSex Workers Freedom Festivalという国際的な催しに参加し、多くのセックスワーカーや支援団体と交流することができた。また、別の機会にインドとタイ、マレーシアを訪問した際、こうした団体のメンバーと交流し、セックスワークの実態に触れることができた。 国内では、5月には、京都大学で国際ワークショップ「グローバル化するセックスワーク―オーストラリアX韓国X台湾X日本」を開催し、オーストラリア、韓国、台湾、日本の支援団体のメンバーを招聘、各国の現状について発表してもらった。韓国や台湾、日本では人身売買法の強化に伴い、セックスワーカーの生活も脅かされている半面、オーストライリアは合法化されることで、生活が保障されていることなどが報告された。全国からおよそ120人の参加があり、セックスワークをめぐる問題の重要性を再認識できた。 6月には広島大学で開かれた日本文化人類学会研究大会で、「客を叱りつける女たち」というパネルを組織し、セックスワーカー、ホステス、スナックのママ、芸者ら接客業に携わる女性と客との関係における感情労働の意義について問題提起を行った。 本発表の成果をもとに、代表者は論文を執筆、投稿予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
次年度は、インタビュー調査だけでなく、日本文化人類学会研究大会での学会でのパネルや国際ワークショップを開催することで、グローバル化する性産業についての現状や分析視点についての理解が飛躍的に発展した。1)学会パネルでは、感情労働という視点からセックスワークを理解することを試みた。それによって、ほかの接客業との比較が可能になった。また、日本では介護や看護に偏っている感情労働研究に貢献できた。他方、外国語文献との関係では、感情労働だけでなく性的快楽をめぐる議論が欠如していることを指摘し、本研究の学術的意義を確認できた。2)国際ワークショップの開催やコルカタでの催しに参加することで、グローバル化するセックスワークとその地位向上運動に触れ、また当事者たちと交流することができた。これらの経験を通じて、本研究の分析枠組みを広げることが可能となった。また交流を通じて今後の研究や国際ワークショップの実現が可能となった。3)学会投稿予定の論文をほぼ書き上げている。以上から、本来なら科研プロジェクトの3年目あるいはそれ以後になされるべき成果公開がほぼ2年目において達成できた点で、計画以上に進展していると判断した。また、慶応大で開催予定の日本文化人類学会においても個人発表を行う(採択済)。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度に当たり、これまで十分に研究できていたい移民と性産業との関係についてさらに集中的に分析を行いたい。また、5月に予定している英国、台湾、中国からの研究者による国際シンポを通じて、よりグローバルな視点から、本研究の理論化を試みる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
調査旅費などに使用する。
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Research Products
(2 results)