2011 Fiscal Year Research-status Report
人類学の方法/対象としての比較の再検討:科学技術における比較の実践を中心にして
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23652190
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
森田 敦郎 大阪大学, 人間科学研究科, 准教授 (20436596)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
モハーチ ゲルゲイ 慶應義塾大学, 付置研究所, 研究員 (90587627)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 人類学 / 科学技術論 / 比較 / 「国際研究者交流」デンマーク / 「国際研究者交流」オーストラリア / 方法 |
Research Abstract |
本年度は、「科学技術の民族誌研究会」と題した研究会を通年で三回実施し、国内外の研究者を招聘して議論を行った。 これに加えて、5月と7月には、本プロジェクトの成果のひとつである、国際ジャーナル、East Asian Science, Technology and Societyの特集号の論文執筆のための特別ワークショップを開催した。その成果である特集号の論文、計6本は12月に提出され現在査読中である。当プロジェクトメンバーの二名はこの特集の編者として、この期間編集作業に携わった。 さらに、年度の末には、他の科研費などと連携して、大規模な国際シンポジウム、Translational Movementsを3月3日に大阪大学で開催した。ここでは、デンマーク、オーストラリア、アメリカなどから招聘した研究者と、本プロジェクトの中心的な課題のひとつである「翻訳」の概念について検討した。シンポジウムの成果は次年度にオンラインジャーナルであるNatureCulture誌に掲載される予定である。 このシンポジウムに併設する形で3月4日には同じく大阪大学で、シンポジウムテーマについての若手ワークショップを開催した。若手の口頭発表に招聘した研究者がコメントするという本企画は広く注目を集め、国内はもとより、アメリカ、トルコ、イギリスなどから30人近い若手研究者が参加し、そのうち約半数が発表を行った。特に日本の若手の水準の高い研究発表は、海外からの招聘者に大きな印象を与えていた。 上記の活動に加えて、研究代表者の森田は2月に本プロジェクトと密接に関わる内容の単著を出版した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、文化の差異についての人類学的比較が、グローバル化する科学技術の中にいかに取り込まれ、混交・共鳴しているのかを明らかにすることであった。本年度は、国際ジャーナル、East Asian Science, Technology and Societyに本テーマについての特集を投稿することができ、初年度に計画していた成果を十分に上げることができた。英文での執筆と編集については、さまざまな困難が予想されたが、デンマークの研究協力者などからの援助もあり、スムーズに作業を終了することができた。 さらに、3月に開催した国際シンポジウムおよび若手ワークショップにより、予想を上回る追加的な成果を達成した。シンポジウムでは、海外から一線の専門家を招聘し、本プロジェクトのテーマと密接に関係する「翻訳」に焦点を当てた討論を行うことができた。この成果は、平成24年に新たに刊行される英文のオンラインジャーナル NatureCultureの第2号(平成25年度刊行予定)に掲載される予定である。さらに、本シンポジウムに併設して開催した若手ワークショップでは、内外から多くの若手研究者(博士課程院生、PD、助教など)の参加を得ることができ、海外からの招聘研究者からも高い評価を得た。このように、国際シンポジウムと若手育成プログラムを連結して開催することは、ヨーロッパなどでは広く行われているが、日本では比較的珍しい取り組みである。このワークショップの成功は、こうした方法が日本の大学院教育・若手トレーニグの国際化に非常に効果的であることを示した点でも意義深いものだった。 これらの成果は本プロジェクト計画時には予想されておらず、計画を相当程度上回る達成と見なすことが出来る。
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Strategy for Future Research Activity |
23年度は、3月末に予定していた出張が事情により急遽中止になったことにより、数万円の繰越金が生じた。この繰越金については、24年度に日程を再調整して出張を行うことで執行する予定である。 23年度に開催した国際シンポジウムで大きな成果を得たため、24年度および25年度はこの成果を編集してオンラインジャーナルの特集として刊行することを目指す。この特集については、24年度中に編集をほぼ終え、25年度に刊行する予定である。 特集の完成以後は、比較および翻訳の概念についてさらなる考察を加え、プロジェクトのメンバー二人で英文の共著論文を作成し、別の国際ジャーナルに投稿することを目指す。現時点では、この執筆作業は25年に行われることになる予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度は、内外の研究者を招聘した研究会を計3回ほど、大阪大学と慶応大学の二カ所で開催する。これらの研究会での議論をとおして比較を巡る問題の構図を整理を行う。さらに、その結果をふまえて、人類学における比較の現在について理論的に検討する共著論文の執筆準備を行う。 これらの研究会と並行して、各自の民族誌データの分析作業のための会合を1から2回、阪大もしくは慶応大で開催する。ここでは各自のデータを持ち寄り、それぞれのテーマであるエンジニアリングと医療における比較の差異と共通点を明らかにする。こちらの成果については、Society for Social Studiesof Science(コペンハーゲン)、American Anthropological Association(サンフランシスコ)などで個人発表する。このための海外旅費の支出を行う。 また、次年度は本年度投稿した国際ジャーナルの特集論文の査読への対応、本年度開催した国際シンポジウムで発表した共著論文の仕上げ作業と、シンポジウム全体の成果を取りまとめたオンラインジャーナルの編集作業を行う。このために必要な経費(アルバイト謝金、英文校閲費など)を本プロジェクトから支出する予定である。
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Research Products
(13 results)