2013 Fiscal Year Annual Research Report
台湾における刑事司法改革の比較法的研究――捜査取調の適正化を中心に
Project/Area Number |
23653001
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
鈴木 賢 北海道大学, 大学院法学研究科, 教授 (80226505)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
坂口 一成 大阪大学, 大学院法学研究科, 准教授 (10507156)
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Keywords | 不適正な取調 / 取調の可視化 / 取調の録音録画 / 被疑者の防御権 / 自白偏重 / 自白調書 / 台湾法 |
Research Abstract |
台湾では1982年に起きた王迎先事件をきっかけにして、警察や検察での取調過程の適正化問題が社会的に関心を集めるようになり、刑事手続改革が進展した。そして1998年の刑事訴訟法改正により取調の全過程を録音(ないし録画)することを義務づける制度(以下、本制度と略)を導入するに至った(100条の1)。本研究では台湾における本制度に関して以下の諸点からアプローチした。 1.本制度導入の経緯、世論、学界、議会での議論状況。2.本制度の実務における運用状況(設備機材、録音・録画の現状、記録媒体の保存・利用のあり方、裁判における活用方法、当事者のアクセスのあり方など)。3.録音録画義務違反の法的効果(録音録画と一致しない供述調書の証拠能力、不十分な録音録画、ないしまったく録音録画がない場合の供述調書の効力など)。4.本制度導入により取調実務に与えたインパクトの有無(不適正な取調への影響、供述のあり方への影響など)。5.台湾の経験から日本法への示唆(自白偏重の傾向で共通する台湾法から得られる教訓)。 以上の結果、以下のようなことが判明した。1.台湾では取調過程の全過程録音録画が実務では定着し、関係者の間に抵抗感はなくなっていること。2.けっして録音録画義務に反する取調が根絶されたわけではなく、しばしば違反は生じているが、判例では一律に証拠能力が否定されているわけではないこと。その意味で今後の問題は義務違反取調の効力の問題を立法的に解決することにあること。3.夜間尋問の禁止や弁護人の立ち会いを認める改正と相まって、不適正な取調は格段に減少しており、本制度の導入が実務に大きなプレッシャーとなったことが確認できること。4.本制度によりことさら自白をとりにくくなったという事実は確認できなかったこと。
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Research Products
(14 results)
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[Journal Article] 1 森川、高見澤からの質疑2014
Author(s)
坂口一成
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Journal Title
『ACADEMIA JURIS BOOKLET 2013:中国における非ルール型法のゆくえ―中国法の変容と不変:非ルール的法との対話―』(北海道大学大学院法学研究科附属高等法政教育研究センター)
Volume: 33号
Pages: 75―76
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