2013 Fiscal Year Annual Research Report
脱当事者主義モデルとしての治療的司法に関する比較法的研究
Project/Area Number |
23653019
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Research Institution | Seijo University |
Principal Investigator |
指宿 信 成城大学, 法学部, 教授 (70211753)
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Keywords | 治療的司法 / 司法臨床 / 加害者臨床 / 問題解決型司法 / ドラッグコート |
Research Abstract |
治療的司法(Therapeutic Jurisprudence: TJ)概念の有用性、わが国での展開可能性についてほぼ確認することができた。 治療サプライヤーだけでなく、被治療者・被処分者の代理人(弁護士)等からも実践的にそうしたアプローチがわが国の刑事司法にも必要であることを確認することができた。すなわち、家庭内暴力の「加害者治療」、薬物乱用者の離脱支援、万引き常習者に対する行動療法などの、社会内での実践が試みられている一方、こうした活動や働きを包括的に論じる視点あるいは哲学がわが国に欠如しており、個別のテーマやミッションに応じた局所的な対応に追われていて国家的取り組みへのステージアップできない実態が明らかになった。 また、海外におけるドラッグコートの参与観察(2013年8月メルボルン、豪州)を通じて、被処分者である犯罪者の更生に大きな貢献があることが確認できた。具体的には、被処分者の治療必要性の評価、治療方法の検討、治療過程の管理と統制ならびに支援と励まし、治療処方の変更や強化といったさまざまな専門的アクターの働きと、きめ細かな「関与」が問題解決型司法には不可欠であることが明らかになった。 他方で、海外学会(2013年7月アムステルダム、オランダ)における研究報告を通じて、現在世界では、TJ的アプローチが刑事司法に止まらずあらゆる社会制度や構成員の問題解決に有用であると認められつつあるかを確認することが出来た。 以上から、今後、わが国で本格的な研究テーマとして治療的司法を捉えていくことの必要性ならびに有用性と、専門家のネットワーク強化と支援の仕組みを統合させる哲学、概念を広く周知させる必要性を確信できるレベルに至った。
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