2012 Fiscal Year Research-status Report
越境的電子証拠収集と訴訟コスト増加への対応に関する比較法的研究
Project/Area Number |
23653021
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
金子 宏直 東京工業大学, 社会理工学研究科, 准教授 (00293077)
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Keywords | 電子証拠 / e-Discovery / フォレンジック / ADR / 仲裁 / 無断複製物 |
Research Abstract |
本研究の目的は外国からの司法共助によらない電子的証拠収集・開示(「越境的電子証拠収集」)および訴訟提起前の電子的情報の高度な保存義務等の問題が、訴訟当事者および社会に訴訟コストの増加をもたらしている点を検討することにある。研究の実施方法として、平成24年度は、日本法、諸外国の法律上の検討を行うため、電子証拠に関する専門書とならんで、訴訟とは異なる仲裁等のADR手続きにおける電子証拠に関連する書籍の収集を行った。今年度予定していた現状把握の方法として、日本における越境的電子証拠収集およびそれに対する日本の対応の実務状況を調べるため、米国弁護士らとともに行う講演会においてヒアリング調査等を行った。特に、日本企業における訴訟提起の予想時点での電子情報保存の必要性についての認識、米国訴訟提起のコスト、e-Discovery対応のコストの認識についての調査を行った。インターネットにおける権利侵害事例の大きな問題として無断複製著作物を取り上げ、電子的情報を利用した権利侵害の日本の民事訴訟における問題点等について検討と報告を行った。仮に、電子的情報を取り扱う訴訟が日本の裁判所に提起された場合にどのように対応することが可能であるのか、裁判所における手続きの電子化についても考察を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定していた、日本人弁護士や実務家に対するe-discoveryへの対応への実態調査(ヒアリング)を実施することができ、米国での一般的な企業実務での認識と日本における企業の認識に隔たりがある点が確認できた。また、英国人研究者とのメール等での情報交換によって、日本における電子証拠偽造事件についての英国法上の関心と比較法的な知見を得ることができた。 さらに、国際会議で来日した情報法の各国の専門家との情報交換ができ、特に、オーストラリアの研究者、韓国の研究者から電子証拠を取り扱う各国の法制度の運用等の知見を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度はこれまで続けてきた文献調査を総括するとともに、文献調査は新しい情報について補足する点で行うことにする。平成24年度に実施した日本人弁護士や企業実務家に対する聞き取り調査を行う機会を設けて、情報を追加するとともに時系列的な視点からの検討を加えたい。訴訟コストを代替的紛争解決手続(ADR)のコストとの比較検討も行う予定である。本研究は情報セキュリティを直接の対象とするものではないが、平成24年度に実施予定であったEUデータ保護指令の役割と米国での訴訟前の電子情報保護義務との関係を検討するために、情報の保存義務について情報セキュリティの観点も加えた上で、義務とその履行コストという点から検討を加える予定である。メールおよび国際会議においてEU諸国における関連資料や専門的な知見を得た上で、電子証拠収集と訴訟コスト増加についての研究の総括を行う予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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