2013 Fiscal Year Annual Research Report
「文学と裁判」研究の将来展開のための基礎的比較研究
Project/Area Number |
23653026
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
川嶋 四郎 同志社大学, 法学部, 教授 (70195080)
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Keywords | 民事裁判 / 文学 / 法教育 / 法科大学院 / 法曹養成 / 司法制度 / 司法アクセス / 宮澤賢治 |
Research Abstract |
本研究課題である「『文学と裁判』研究の将来展開のための基礎的比較研究」は、これまで日本ではほとんど論じられることがなかった「法と文学」研究の基礎的視角の下で「文学に見る民事裁判」研究の基礎を獲得することを目的とするだけではなく、それをもとにして、民事裁判研究のみならず教育実践にも重きを置いて、具体的な「民事訴訟法教育」、「民事紛争処理教育」、「法教育」および「法学教育(法曹養成教育)」に生かすための諸提言を行い、そのための諸資料を創発的に考案し公表実践することを目的とする。その成果を論文、ひいては単行本として公刊することを企図している。このような挑戦的な意味合いをもつ新奇性のある萌芽研究の着想は、市民のための民事裁判の実現のための強い学問的な希求によるものである。 本研究期間において、私は、洋の東西を問わず様々な文学作品を渉猟し、「法と文学」研究のための基礎的資料を収集するとともに、いくつかの文学館や図書館を尋ね、作家の生い立ちや作品の背景ひいてはその地でしか感得することができない風土などを知り、かつ、間近で接することができた。 私は、この研究の機会で得た様々な学術的な知見をもとに、今後、特に特定の作家の作品に絞った教育教材と研究分析を公表する予定している。 その際に、現在本格的なまとめに入っているのが、宮澤賢治であり、彼のいくつかの作品を基礎として、感性豊かな一詩人が大正昭和の裁判制度(特に、民事裁判制度・民事司法制度)についての考察を深めつつある。賢治は、その作品の中で、人間の立場を相対化し、その謙虚さの価値を問い、かつ、苛酷ではあるが豊かな恵みをもたらす自然界の不思議さに目を向けさせてくれるだけでなく、さらに、民事紛争処理や民事裁判というもののあり方をも考えさせることを明らかにできた。
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