2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23653027
|
Research Institution | Kobe Gakuin University |
Principal Investigator |
今川 嘉文 神戸学院大学, 実務法学研究科, 教授 (30295729)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2012-03-31
|
Keywords | 信託 / 民事信託 / 後見制度 / 後見制度支援信託 / 事業承継 / 高齢者・障害者の財産管理 / 信認義務 / 震災と信託 |
Research Abstract |
わが国では、高齢化が急速に進み、高齢者および障害者の財産管理を法的に保護し、委託者の要求または財産の状況にあわせたスキームの構築が求められている。高齢者自身、配偶者その他の親族の生活保障に加え、委託者が会社を経営している場合、後継者の確保による事業の維持・承継等をいかにスムーズに行っていくかは、当事者だけでなく、社会全般に係る問題である。本的研究成果は、編著『誰でも使える民事信託(第2版)』にまとめて発刊した。その内容の特徴として、つぎをあげる。 第1に、民事信託の留意点として、詐害信託の取消しと対処、受託者の破綻懸念と属性について具体的な観点からまとめた,詐害信託の防止・対処として、法律・税務・会計等の専門家は民事信託に関し、初期の計画立案、関係者との調整、当局との事前調整、信託登記、違法行為の継続的チェック、後見制度支援信託における後見事務、信託監督人等の就任と課題について検討をした。 第2に、諸外国の信託制度では、(1)米国では、信託制度と裁判所の関与のあり方、(2)フランスでは、信託制度における当事者の契約自由を尊重する観点からの考察、(3)ドイツでは信託制度ドイツ相続法について考察した。 第3に、近日施行された「後見制度支援信託」について、実例を交えて考察をした。具体的内容は、(1)制度の意義、(2)制度の利点、(3)後見制度支援信託契約の内容、(4)信託財産、(5)信託契約の終了、(6)専門職の関与のあり方、(7)後見制度支援信託の問題点と対処、である。 第4に、高齢者・障害者施設の金銭管理と法的課題について、(1)金銭管理の課題対策、(2)管理方法、(3)取り扱い規程、(4)後見制度支援信託の適用類型、(5)職員の違法な財産処分、(6)外部機関との連携協力、を具体的に考察した。 第5に、被災後の法的課題と民事信託の活用である。東日本大震災および原発事故による当該地域の復旧または復興は、被災前の原状回復という視点だけでなく、新たなスキームに基づく対策が必要である。例えば、被災地の同じ場所で復旧または復興を図ろうとしても、物理的に不可能であり、または長期的に困難である地域がある。被災後の法的課題解決策として、民事信託は個別事案に照らせば有用である。例えば、震災復興のため、受託者として「パブリック・トラストセンター」を設立し、広く信託財産を受益権化して、受益権を他の公的機関または投資家などに買い取ってもらうことが考えられる。受託者は信託事務に関する取引で生じた債務について、一定範囲で責任が限定される。また、信託の受益権が譲渡により転々流通し、不特定多数の受益者が生じることが予想される一方、受託者の破綻が現実のものになるおそれがある。受託者であるパブリック・トラストセンターは、地域法人が出資した民事信託会社、公的機関、士業関係機関、NPO法人などが考えられる。
|