2011 Fiscal Year Research-status Report
「統治機構のポスト近代」に、民主主義の規範理論はいかに応答可能か?
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23653041
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Research Institution | Kinki University |
Principal Investigator |
大西 弘子 (岡部 弘子) 近畿大学, 全学共通教育機構, 講師 (00517394)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | ガバナンス / 正統性 / 討議デモクラシー / ポリティ / コンソシエーショナリズム / フェデラリズム |
Research Abstract |
本研究の問いは、「統治機構のポスト近代に、民主主義の規範理論はいかに応答可能か?」である。「統治機構のポスト近代」とは、今日の民主主義の統治機構が、政策決定の拡散、および、メンバーシップの融解ともいうべき、近代初期には想定されなかった条件のもとにあることを指す、筆者の造語である。民主主義の規範理論は、それを「正統性問題」「民主主義の赤字」として扱うことが多かったが、本研究は問いを逆転させ、民主主義がおかれる条件の変容は、評価の基準となる民主主義の規範そのものの更新を要求しているのではないか、と考える。 この問いを解くために、本年度はまず、統治機構の変容と民主主義的正統性の関係について先行研究が蓄積してきた論点の整理をおこなった。具体的には、ネットワーク・ガバナンス論のいわゆる「第二世代」の正統性論、およびコーポラティズム論から「私的利益政府」論について検討した。その結果、ガバナンス論は、従来的な主権概念からの代議制民主主義解釈にもとづいて正統性の補完または侵害を論じるか、あるいは、代議制民主主義とは切り離れて一般的な行為調整様式としての民主主義理解から正統性を論じており、統治機構の条件変容に応える規範理論としては限界をもつことが明らかになった。また、私的利益政府論は、統治機構のいわゆる「横への拡散(=私的アクターの関与)」を受けて正統性理解の更新に踏み込んだ点で評価されるが、「縦への拡散(=超国家・ローカルとの相互乗り入れ)」が踏まえられていない点で、依然として固定的なポリティ理解を前提とした民主主義論であることが明らかになった。 ここから、次のステップは、主権論を基礎としない代議制民主主義の正統性解釈の可能性、および、ポリティを動態的にとらえる民主主義論の可能性を、先行理論に探ることとなる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究の中間的成果を学会報告したが、まだペーパー公表していないため「おおむね」順調とした。
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Strategy for Future Research Activity |
前述の次のステップの前者としては、ハーバーマスの民主的法治国家論が、ポスト近代統治機構における正統性解釈、に与える示唆を(特に司法理解に着目して)探りたい。後者の、ポリティ動態性の規範的理解については、フェデラリズムの再解釈(とりわけオストロムのそれ)の到達点を確認したい。後者については、11月に学会報告を予定している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究費の繰越は、(計画当初不明であった)当該研究にかかわる国際学会への参加のため。他は、当初計画どおり、主として文献購入と国内研究会への旅費にあてられる。
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Research Products
(1 results)