2012 Fiscal Year Research-status Report
「コンパクト(協約)」型の平和構築戦略のモデル化とその立体的な運用を目指して
Project/Area Number |
23653045
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
星野 俊也 大阪大学, 国際公共政策研究科, 教授 (70304045)
|
Keywords | 平和構築 |
Research Abstract |
ポスト紛争国の平和構築過程では、現地の諸主体と国際社会の諸主体との双方のコミットメントを前提とした戦略の形成と実施が不可欠との認識が共有されているが、これまでの研究はもっぱらイシューごと、事例ごとの断片的なものにとどまっている。本研究は、こうした現状に一石を投じ、平和構築過程における戦略文書を、現地と国際社会の主体間の「コンパクト(協約)」と一般化したうえで現実の複数の平和構築の現場での取り組みを比較する視座を提供することを目的とし、具体的な「コンパクト」型戦略とその実施状況を検討している。その意味で当初の申請調書にとりあげた10件のケースの分析も重要だが、モデルのより幅広い汎用性を高めるため、今年度は、長年にわたる紛争から和平に転換し、平和構築に向けた努力が動き出した東南アジアの3つの事例(タイ南部問題、フィリピン南部問題、ミャンマー少数民族問題)の行方や、中東・湾岸情勢のなかでの平和のための諸取り組み(「アラブの春」を受けた政治変動とその帰結)についても情報収集と行った。こうした新たな情報も踏まえ、香港で開催されたアジア政治学会の機会に、アジア諸国をリードする有力な政治学者たちと非公式な意見交換を行う機会を得た。以上を通じ、紛争後の現地情勢が和平に向けていかなる肯定的な変化が見られたかを判断する尺度として取り上げた5つの状況(パワーの配分、権威の配分、能力の向上、対話の進展、財源の確保)を見る視点を再調整する必要が見出された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定されていたネパール現地調査は別財源で実施することができ、財政的な節約が可能となったことから香港での国際会議(アジア政治学会)の場において地域を代表する有力な研究者と非公式ながら意見交換をし、多くの助言を得た。また、「コンパクト」型戦略の研究が、当初予定していた10案件の分析にとどまらず、東南アジアや中東・湾岸で現在進行形で進む政治変動を分析する視座としても有効となりうることについても一定の確証を得られ、本研究は概ね順調な深まりを見せているものと自己評価している。
|
Strategy for Future Research Activity |
3年度目で最終年度となる本年度は、当初に予定していた10件と、追加的に着目した東南アジアの事例に関する最新動向をチェックし、それを「コンパクト(協約)」型の平和構築戦略の基本構造にあてはめ、さらに戦略実施の進捗状況を測定するベンチマークを創案するというまとめの作業を中心に研究を進めたいと考えている。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
3年度目で最終年度になることから、「コンパクト(協約)」型の平和構築戦略の基本構造とそのベンチマークを創案するための最終的な資料収集・整理・成果報告準備のための人件費、情報交換や暫定的な研究成果報告を行うための国内(東京及び新潟での日本国際政治学会)・海外(シンガポールを予定)旅費などを想定している。なお、前年度については、研究を進めていくうえで必要に応じて研究費を執行したため当初の見込み額と執行額は異なり未使用分が残ったが、その後も研究計画に変更はなく、前年度の研究費も含め、今年度行う予定の研究計画と併せて実施する。
|
Research Products
(26 results)