2011 Fiscal Year Research-status Report
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23653049
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
町野 和夫 北海道大学, 経済学研究科(研究院), 教授 (20280844)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 互恵性 / 規範形成 / 進化ゲーム |
Research Abstract |
本研究は,プレーヤの効用関数の中の利他性や互恵性が内生的に形成されるメカニズムを明らかにしようとするものである。23年度の計画であった,神経科学(あるいは脳科学),進化生物学,動物行動学などのサーベイによると,人類あるいは霊長類の進化の過程で,生き残りに不可欠な社会性を身につけ易い(利他性や互恵性を助長する)性質(脳の仕組み)を獲得してきたと考えられる。文献サーベイ以外でも7月に中国の清華大学で行われたInternational Economic Associationの世界大会では,本研究助成申請書類で言及したようなゲーム理論,実験経済学などの世界的な経済学者のいくつもの講演を聞き,ゲームのプレーヤの利他性や互恵性を実証する研究や,制度形成のメカニズムに関する研究の最新の成果を吸収することができた。 23年度に起こった東日本大震災と原発事故は,日本人の価値観に大きな影響を与えたと思われるが,政策面でそれが反映されつつあるのが,従来の中央主導型エネルギー政策の根本的見直しである。23年度は以前から本研究担当者が責任者となって進めていた研究科内の地域経済経営ネットワーク研究センターの設立と重なったが,この研究センターでは,従来の中央集権型から自律分散ネットワーク型の社会経済システムへの移行が日本に限らずこれからの社会の大きな流れであると考えている。10月の設立シンポジウムや10月から24年2月にかけて実施した研究会では,エネルギー政策など具体的な政策や経済・経営の動きについての報告や研究が中心ではあったが,直接的,間接的にその背後にある自律分散ネットワーク型の社会経済システムを志向する価値観の転換についても何度か議論された。この研究会シリーズの9回の研究報告の総括は,本研究担当者が行い『地域経済経営ネットワーク研究センター年報』の第1号に掲載された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
関連研究分野が,神経経済学や進化・学習ゲーム理論,といった経済学分野から,神経科学,進化生物学,人類学,法哲学,公共政策学などと広いので,関連分野全てにおける最新の研究のサーベイは専門性の点でも,量的な問題からもかなり難しい。従って,非経済学分野については,最新の研究成果をサーベイした論文や書籍を中心に,価値観の形成に関連するトピックに絞ってサーベイを行っている。まだ最新の情報まで集めきれていない部分もあるが,これは2年目以降も続けるという予定の範囲内である。また,上述の国際学会や,国内で開催された,法と経済学会(7月),日本経済学会(5月,10月)でも主に経済関連分野について,最新の研究成果を吸収できた。 ゲームモデルの概念設計については模索中である。これは,上述のように23年度に起こった東日本大震災と原発事故が,日本の政策の方向性に影響を与えるほど人々の価値観を変えているという事態に遭遇したことであり,予定外ではあるが,この価値観の変化について観察中である。また上述のように地域経済経営ネットワーク研究センターでの活動も本事業の研究に有益であった。従って,ゲームモデルの概念設計については進み方の遅い面もあるが,一方で3.11後の日本社会の価値観の変化に関する考察で予定外の進展があったので,総合するとおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
まず,当初の予定通り,上述の関連分野について(関連の深さに応じた)最新の研究のサーベイ(専門書,専門誌やインターネットを通した文献・情報収集とその分析)は継続する。また,当初の予定とは異なるが,上述の地域経済経営ネットワーク研究センターの研究会シリーズの一つとして,今年度,幸福度指標に関わる研究会シリーズを計画しており,地域間や世代間の価値観の違いとその形成過程についての分析や東日本大震災(と原発事故)後の価値観の変化についての分析を考えている。そこでの,様々な分野の他の研究者との討論やセミナーや研究会での報告を経て,本事業の目標である理論的モデルの構築を進める。本事業は来年度まで継続するが,色々な試行錯誤が必要と思われるので,モデル構築は今年度から開始する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
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Research Products
(2 results)