2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23653050
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
秋田 次郎 東北大学, 経済学研究科(研究院), 教授 (10302069)
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Keywords | 経済理論 / 経済数学教育 |
Research Abstract |
本研究計画は、経済学及び経営学の為の数学(以下、経済数学と称す。)教育におけるイメージを重視した直観的理解を促す為の教材ならびにカリキュラム開発を目的とする基礎研究を行うことを目的とし、幾何学的直観、経済学的直観、それ以外の直観につき、経済数学の入門段階からより高度な段階において組織的に直観的解説・理解の為のリソースの開発を行う計画である。平成24年度は東日本大震災に起因する遅延を取り戻しつつ、上述の目的に適した内外の文献を探索し調達して内容の解析作業を進め、仙台東北を訪れた数理経済学研究者と意見交換し、それと並行して前年度の東北大学経済学部の経済経営数学の講義資料開発に引き続いて、東北学院大学経済学部の経済数学(約30レクチャー)を開発し、直観的な理解を教程に盛り込む際の現実的課題について、より多様な数学的準備と課題を持つ学生を対象として、実際の学生の反応を参考しつつ考察を進めた。大学院レベルの教程に関しては講義教材という纏まった形での検討を行う機会は無かったが、①「行列のテンソル積の幾何学的な意味に関する考察」、②「非負行列に関するフロベニウスの定理の幾何学的意味に関する考察」、③「割引現在価値の概念を通じての完全微分・積分因子の直感的理解に関する考察」をmimeoに取り纏めた。 平成24年度 東北学院大学経済学部 経済数学講義資料
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究計画においては、幾何学的直観、経済学的直観、それ以外の直観につき、経済数学の入門段階からより高度な段階において組織的に直観的解説・理解の為のリソースの開発を行う計画だが、初年度の東日本大震災の影響により研究活動全般が大きく遅延した。遅延した関連文献の整理・解析作業はある程度予定を取り戻したが新規調達はその為、なお遅延しており、残された時間を有効活用するよう努めたい。初年度に引き続き、他大学の学生対象の教材開発とその利用を通じて、典型的教程において何についての直感的理解が求められるかについて具に検討する機会を得た。幾何学的直観、経済学的直観、それ以外の直観という分類の観点からすると、平成24年度は、①「行列のテンソル積の幾何学的な意味に関する考察」において、二つの行列A、Bのテンソル積の列空間に対する射影を表す射影行列が、行列A、Bそれぞれの列空間への射影行列同士のテンソル積によって与えられることを手がかりに、テンソル積の幾何学的な意味を検討した。また②「非負行列に関するフロベニウスの定理の幾何学的意味に関する考察」においては、可視化可能な二次元、三次元に限定して最大固有値が1を超える必然性を視覚的に理解させる方法を検討した。経済学的直観についても③「割引現在価値の概念を通じての完全微分・積分因子の直感的理解に関する考察」において、いわゆる積分因子が経済学の割引因子に対応することの認識を出発点に、それがなぜ完全微分の条件を導くのかについての経済学的直観を考察した。
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Strategy for Future Research Activity |
当初計画における幾何学的直観、経済学的直観、それ以外の直観につき、経済数学の入門段階からより高度な段階において組織的に直観的解説・理解の為のリソースの開発を行う計画のうち、幾何学的直観および経済学的直観に纏わる論考については、mimeo段階の検討事項を完成させ、未着手の部分も含めて残された時間に可及的に論考を重ねる。他方、それ以外の直観については平成24年度は予備的情報収集と解析に終始してしまった為、平成最終年度に集中的に対処する。資料探索調達解析も以上を念頭に引き続き継続する。また平成25年度も経済数学関連の科目を担当する機会があるので、そこからのフィードバックを基に教材の改善を通じて最終的アウトプットに向けて検討していく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究費の大半は書籍や雑誌の費用を中心とする資料探索調達解析活動費用に充てる。また平成24年度は専ら東北を訪れる研究者との意見交換に終始したが、平成25年度にはそれ以外の経済数学に関するエキスパートのオピニオンを取材することも検討しておりその為の旅費・謝金にも相応の費用を充てる。
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