2011 Fiscal Year Research-status Report
教育学・心理学・社会学的視点を導入した、教育の経済学への新しいアプローチ
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23653054
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
内田 浩史 神戸大学, 経営学研究科, 教授 (60294295)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
柳原 光芳 名古屋大学, 経済学研究科(研究院), 准教授 (80298504)
金子 昭彦 早稲田大学, 政治経済学術院, 准教授 (10282873)
加藤 秀弥 名古屋経済大学, 経済学部, 准教授 (80434629)
篠崎 剛 東北学院大学, 経済学部, 准教授 (80467266)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 教育の経済学 / 教育学 / 心理学 / 教育目的 / 教育制度 |
Research Abstract |
本研究は、教育制度が経済・社会に与える影響について、経済学の枠組みに教育学・心理学・社会学の考え方を取り入れて分析することを目的としている。初年度となる平成23年度は、研究の基礎となる教育の目的、教師・生徒の行動原理の定式化を行うため、心理学・社会学等の他分野の知見に関してサーベイを行い、その成果を研究代表者・研究分担者全員で共有した。サーベイの結果、そして、その過程で心理学の専門家から教授を得た専門的知識に基づき、本研究の目的を達成するためには、主に教育心理学・発達心理学の分野の知見、特に社会的スキルや道徳性といった概念に関する心理学分野の知見が重要であり、それを本研究で構築する教育の経済モデルに取り込むことが適当であることが分かった。また、本年度は研究者全員でミーティングを行って、構築すべきモデルの概要に対する検討も行った。そして、具体的な構築作業を行うためには、教員の教育活動の現状把握、教員評価制度の現状把握とモデル化、客観的評価が難しい教育活動の特定、教育の目的の整理、といった点についてそれぞれ検討を行う必要があることが分かった。これらの検討は次年度以降に行うこととした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画においては、本年度は研究の基礎となる教育の目的、教師・生徒の行動原理の定式化について、主に教育心理学・発達心理学・教育社会学の分野を中心に文献サーベイを行うこと、としていたが、これらについては計画通りに進めることができた。また、他分野の知見を効果的に取り入れるために、当該分野の専門家に対するインタビューも行うこととしていたが、計画通り、社会心理学の研究者から貴重な情報を得た。また、構築すべきモデルに関してもその概要に関する検討を行うことが出来た。このため、研究は当初の計画通りに進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も、基本的に当初の研究計画どおりに研究を進める。平成24年度においては、前年度の整理を踏まえ、具体的に経済モデルを構築する。まず、主として契約理論に依拠したミクロレベルのモデルを構築し、また主として人的資本論に依拠したマクロレベルのモデルへと、2つのレベルで理論化を行いつつ、それらの統合をはかる。ミクロレベルのモデルについては、マクロレベルのモデルのミクロ的基礎を構築するものである。このモデルとしては、本研究の特徴である、教育段階の区別と教育目的の違いを的確に捉えることのできるモデルを構築する。具体的には、前年度の検討結果に基づいて、心理学分野における知見を契約理論のモデルに取り入れる。その際には生徒・教師の行動原理と教育目的をモデル化することになる。これと並行して、マクロモデルに関しては、日本の教育制度の内生的な成立過程を描写することのできる動学マクロモデルを構築する。この作業はこれまでに行われている研究を参考にする形で行い、また、日本の教育制度の成立過程を扱った文献、とくに教育学・社会学の研究成果を積極的に導入する。その後、上記のミクロモデルとマクロモデルを統合する。動学マクロモデルにより描写した日本の教育制度モデルの中に、契約理論的アプローチから定式化した教師・生徒の行動を組み入れる形で、最終的なモデルを構築し、日本の教育制度の中での経済主体の行動を包括的に描写し、比較静学・比較動学による定性的な結論を得ることを可能とする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度も、研究費は主に研究打ち合わせのための旅費に対する支出を中心とする。これは、研究代表者・研究分担者の所属大学が神戸・名古屋・東京・仙台と離れて立地しているためである。それぞれ分担して行った検討の結果を持ちより、統合して経済モデルを構築するため、全研究者によるミーティングを行う。また、心理学を中心として他分野の文献をさらに購入するために物品費を支出する。さらに、研究補助のための支出も行う予定である。
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Research Products
(1 results)