2012 Fiscal Year Research-status Report
人間本性に基づいた効用理論の導出とその経済学への導入
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23653055
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Research Institution | Meikai University |
Principal Investigator |
影山 純二 明海大学, 経済学部, 准教授 (50337490)
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Keywords | Relative Concerns / Happiness / Time Preference / Value of Life / Bioeconomics / Natural Selection / 国際研究者交流 / オーストリア |
Research Abstract |
1, 効用の諸性質を進化生物学的見地から導出する試みの1つとして、「効用の相対性およびその所得可変性」について生物学的基礎付けを行った。その結果は、昨年度作成した論文1本 (1, 投稿中) に加えて、新たに2本の論文 (2, 3, 共にworking paper。現在、出版の適切な時期を待っている) にまとめた。それらの内容は、それぞれ、(1) 効用の相対性とその所得可変性を行動生態学の知見より生物学的に基礎づけ、(2) 相対的効用の所得可変性を経済学に導入して近代の経済成長と出生率転換を理論的に説明、(3) 相対的効用の所得可変性とその出生率と教育の関係から、幸福度・出生率・教育・経済成長の関連を説明し実証的に証明、である。 この一連の研究によって、生物学的に予想された選好を経済学モデルに導入し社会現象を説明し得ることを示した。これは、生物学と経済学の相互補完性を示す具体例として、今後につながる重要な成果だと考えている。 2, 子どもの時間選好率に関する論文 “Why are children impatient” は引き続き投稿中である。そしてこの論文の成果を利用し、Value of Life の概念を生物学と経済学の両面から考察した論文を1本仕上げた。この論文は『行動経済学』より出版予定である。またこの論文に関しては、オーストリア・ウィーンのVIDの研究者である Michael Kuhn と2012年11月に会い、協力を仰いだ。今後の拡張においては、共同研究とすることも視野に入れている。 3, 交付申請書の研究計画で示した「効用の諸性質を経済学においてどうまとめるべきか」という課題に関しては、幸福度研究も含めサーベイを行い、アプローチの仕方を含め、その方向性を現在考察中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
紆余曲折はあるものの、2年間で本研究に関して5本の論文をまとめ、各種国際学会等で発表し、このうち出版予定が1本、投稿中が2本、投稿へ向けて適切な時期を待っている論文が2本というのは、予想以上の成果である。査読に時間を要するため出版まで時間をかかっているが、着実に成果の出版へ繋げていきたい。 また、現在まで「効用の相対性およびその所得可変性」を軸の1つに添えて研究を進めきたが、この問題だけでも、生物学と経済学において多くの研究テーマが残っていることが見えてきた。この結果、新たに見つかった個別課題を論文化するために交付申請時の計画から変更した部分もあるが、その変更分は今後の研究で吸収していきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
25年度が本研究の最終年度ということで、論文を学会で発表するとともに、論文を出版することが必要である。そこで、できる限り早くすべての論文を出版プロセスへ乗せていきたい。また個別テーマでは「効用の相対性への性差を導入」など、積み残されているテーマを論文化していきたい。 それとともに、研究実績の概要の1で示した「生物学と経済学を複合的に利用して、社会科学において新しい発見につなげる」ということが、新しい研究方法として有意義であることを示していきたい。とくに、 (1) 経済学における最適資源配分という分析手法を生物学に導入し、(2) 生物学においてその手法を利用して人間本性に関する新たな知見を得、(3) その生物学的知見に基づいて社会現象を説明する、という一連の研究方法が、今後の社会科学の発展の上で有効であることを、説得力のある具体例とともに提示できればと考えている。 その上で、これらの成果を利用して、本研究の1つのテーマである「効用の諸性質を経済学においてどうまとめるべきか」という課題に対して、その解答の方向性を示していきたい。その際に、上記で示した一連の研究方法が効用の諸性質をまとめる方法の1つの候補となるだろう。挑戦的萌芽研究としては、この研究方法の有効性を示し、将来の方向性を示すことができれば、大成功と言える。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
学会発表と論文出版に伴う経費を中心に研究費を使用する。学会発表に関しては、(1) アメリカ人口学会2013年次大会 (2013年4月アメリカ・ニューオリンズ)、(2) 日本人口学会 (6月札幌)、(3) 日本経済学会春季大会 (6月富山) は決まっており、場合によっては国際人口学会とアメリカ経済学会へも参加したいと考えている。
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Research Products
(9 results)