2011 Fiscal Year Research-status Report
GPS情報の活用による公的統計の新たな展開可能性に関する多角的研究
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23653060
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
森 博美 法政大学, 経済学部, 教授 (40105854)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
坂田 幸繁 中央大学, 経済学部, 教授 (00153891)
坂本 憲昭 法政大学, 経済学部, 教授 (70386324)
菅 幹雄 法政大学, 経済学部, 教授 (50287033)
小西 純 (財)統計情報研究開発センター, 研究開発本部, 研究員 (70443322)
田中 力 立命館大学, 経営学部, 教授 (10212036)
近藤 章夫 法政大学, 付置研究所, 准教授 (60425725)
栗原 由紀子 中央大学, 経済学部, 助教 (30610589)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | GPS / データベース / GIS / 空間情報 / レジスター |
Research Abstract |
当初の研究計画に従い、平成23年度は、(1) 各国統計機関におけるGPS情報の整備・利活用の実態把握、(2)GPS情報の観測誤差の計測、(3)アドレスマッチングの実情を中心に研究を展開した。昨年度までの準備的研究と今年度実施した海外での現地調査とから、フィンランドとアメリカ合衆国がGPS情報を直接取得しており、またカナダとフランスでは、街路の両端点のGPS情報に基づき各建物のそれを推計する方法で位置情報を取得している。一方、位置情報の統計活用面では、各国とも単なる統計の表章方法にとどまっており、位置情報による統計個票情報の拡張という本研究のような観点からの統計の展開はないことが明らかになった〔以上、項番(1)〕。今年度の研究で実際に種々の計測機器による観測精度の比較分析を行った。その結果、現在のGPSの観測精度がすでに「最後の10m問題」を克服し、建物あるいは事業所等の場所的識別に十分対応可能であることを明らかにすることができた〔以上、項番(2)〕。種々のマッチングサービスによるアドレスマッチングの比較を試み、既存のマッチングサービスの件数制約や住所の枝番号までの対応の有無などの事実の確認を行った〔以上、項番(3)〕。 また、研究成果については、各研究者が論文や学会等での報告により社会還元に努めたほか、本プロジェクトの拠点施設である法政大学日本統計研究所から、本年度の研究成果の一部を報告書Exploring Potential of Individual Statistical Records(『研究所報』第41号)として公刊した。なお本書はhttps://www.hosei.ac.jp/toukei/shuppan/mokuji41.htmlとしてもウエブ公開しており、海外の政府統計機関野党系研究者に対してもまさに萌芽的研究として情報発信を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究は、統計個体情報への位置情報(GPS)の付加による統計の新たな展開可能性の開拓というまさに挑戦的課題をもって企画したものである。その後、3.11の東日本大震災を契機に、統計を用いた被害評価推計や罹災マップ等の情報を政府が提供するなど、統計における空間情報が有する情報価値の重要性に広く社会的関心が向けられるようになり、本研究は、社会的にも注目されている。本研究の開始年次にあたる平成23年度には、各研究班はそれぞれの研究課題に取り組んできた。その成果は、論文や学会等での報告で積極的に開示してきた。特に、この間の多面的な研究成果の一部は英文の報告書Exploring Potential of Individual Statistical Records としても刊行した。このことは、統計個票情報や行政情報への位置情報の付加が、それを介して各種の情報をレイヤーとして相互に統合(integrate)することで統計の潜在能力を飛躍的に高めるとの問題提起については、政府統計の新たな展開可能性を示唆するものとして、内外の政府統計機関や研究者から注目されている。平成24年度には、本研究の主要な課題の一つとして、具体的に位置情報を持つデータベースの具体的な構築を行うことにしているが、平成23年度には、その骨格情報となるタウンページデータのクリーニング作業という次年度に向けての作業にも着手している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度には、研究プロジェクト全体で位置情報による調査票情報の情報価値の拡張可能性に関する基本的問題意識を共有しつつ、各研究班がそれぞれ分担して海外諸国における位置情報の統計利用の実態に関する調査をはじめ、位置情報取得の情報技術的側面や観測結果の精度に関する検証、調査個票の情報特性の研究といった諸課題に取り組んできた。それらの中で特に位置情報による調査票情報の情報価値の拡張可能性に関する方法論的検討結果は、法政大学日本統計研究所の『研究所報』No.41として刊行したExploring Potential of Individual Statistical Records に集約されている。平成24年度は、これまで実施してきた海外調査の対象国を広げ、一層包括的にその実態把握を行うとともに、昨年度までの方法論的研究成果を踏まえ、情報価値の拡張可能性についての具体的展開に取り組む予定である。研究内容としては、まず緯度経度情報を変数として持つ事業所を対象とするデータベースを八王子市域をフィールドとして実際に構築し、各レコードに位置情報を介して様々な地域特性情報を変数として付加する。このようにして構築したデータに基づき、事業所の業種別、立地特性別の新規参入や退出といった動態分析を行う。なお、これは、OECD統計局が、近年、国際プロジェクトとして推進している企業動態分析(business demography)とも内容的には整合的なものであり、ビジネス・レジスターが整備途上にある日本からのこの分野での情報発信は、国際的にも注目されている。3月に計画していた海外調査が、先方の業務多忙により平成24年度に延期されたため、当初予算について、翌年度への繰り越しとなった。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度は、次の3つの分野での研究に取り組む予定である。まず、海外におけるGPS情報の公的統計への活用について平成23年度に引き続き現地調査による実態把握を行うとともに、具体的な利用実績を持つ海外の研究者、政府統計職員との研究成果の交流に取り組む。次に、平成23年度においてすでに準備的作業に部分的に取り組んできた位置情報を変数として持つ事業所母集団データベースの構築作業を行う。そして第三に、構築したデータを用いて、事業所の動態分析を試みる。事業所データベースの構築には、NTTのタウンページ(職業別電話帳)ファイルの使用を予定している。このファイルには住所情報や業種情報を持ち、アドレスマッチングを用いて位置情報を取得でき、業種別分析も可能である。その反面で、すでに使用されなくなった電話番号も掲載しているという問題も持っている。このため、データベースの構築に当たっては、まずクリーニングした各年次ベースでのタウンページファイルを作成し、それから差分情報を作成する。さらに差分情報から得られた電話番号の新規登録や削除情報を手掛かりに、フィールドワークによって現地確認することで、各年の事業所の開設、廃止、あるいは移動の実態を把握することになる。このようにして構築した事業所データベースに基づき、各種の動態分析を行う。このため平成24年度については、海外調査や海外の研究者等との学術交流のための費用、内外学会等での研究発表のための経費、データ購入やクリーニングに係る経費、事業所の実態把握に必要な経費、さらには会議費等が必要となる。平成23年度予算より繰り越しとなった研究費については、海外調査(35万円)ならびに研究の最終的とりまとめに必要な研究打ち合わせ(約15万円)に使用する。
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Research Products
(29 results)