2013 Fiscal Year Research-status Report
新興市場の金融政策レジーム:マクロ・トリレンマからの解放
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23653067
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
高阪 章 関西学院大学, 国際学部, 教授 (00205329)
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Keywords | マクロ金融政策レジーム / マクロ政策のトリレンマ / 国内金融システム / マクロ経済ショック波及メカニズム / マクロ金融リンケージ / 東アジア新興市場国 / グローバル金融危機 / 地域金融協力 |
Research Abstract |
グローバル金融危機など、自由な資本移動のリスクが再認識されており、無条件に金融資本自由化を是とする金融政策レジームは、途上国のみならず、先進国についても再検討する必要がある。そこで本研究では、東アジア新興市場を対象として、各国の多様性を明示的に考慮しつつ、高い資本移動性の下でも頑健なマクロ金融政策レジームを探る。 その結果、東アジア新興国は他の地域にはないユニークな金融政策レジームを構築してきたことがわかった。すなわち、為替レートの安定性と資本フローの管理を政策目的とする、いわばマクロ政策トリレンマへの挑戦ともいうべき折衷的なレジームである。それを可能にしたのは国内貯蓄の豊富さであり、直接投資を主体とする安定的な外国資本フロー構成を実現し、他方で外為介入による為替変動抑制に取り組んだ。その結果、外貨準備蓄積が進行したが、国際資本市場のボラティリティから自国をガードするのに成功し、また自身は投資国として東アジア地域の資金循環の安定性に貢献してきた。本研究計画の当初に「この東アジアのヘテロドックスな金融政策レジームの機能を実証的に解剖することによって、新興市場の金融政策レジームに関して有力な代替的選択肢を提示することができるのではないか」との予想は間違っていなかったように思われる。 以上の知見は、4月のIAEA大会(ウィーン)、8月のSingapore Economic Review Conference(シンガポール)で報告され、また11月のPAFTAD会議(PAFTAD36: Financial Development and Cooperation in Asia and the Pacific, Hong Kong Monetary Authority、香港)でも討論の基礎となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究代表者(高阪)は、研究全体を統括するほか、東アジア経済に関する研究蓄積に基づいて比較軸となる欧州新興市場との対照性を調査した。また、連携研究者(小川・佐藤)は国際マクロ・国際金融の知見にもとづき、課題の遂行に協力すると共に、計量分析作業に対して助言を行った。若手連携研究者(新開)らは、それぞれ、担当する対象国のマクロ経済ショックの時系列分析作業に取り組んだ。研究代表者と連携研究者・研究協力者は、2ヶ月に一度程度、定期的に研究会を開催、また、国内出張によって、意見交換・ヒヤリングを行った。また、上記の「8.研究実績の概要」で述べたように、海外出張により、海外調査および国際学会報告を通じて、関係機関において資料収集・意見交換を行った。 上記の「研究実績の概要」はこれらの研究活動の成果であり、そこでまとめた論点はいずれも、従来の議論では明確にされて来なかった、他の新興国に比べて東アジア新興国のみに見られる特徴をアイデンティファイしたものであり、同地域のグローバル金融危機に際しての頑健性の基礎となる要因として注目される他、これらの構造変化は、従来、ヘテロドックスなものとされてきた、同地域のマクロ政策レジームの正当性・妥当性を示すものとして大きな政策的インプリケーションを保つものと思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
ここまで、新興市場のマクロ金融政策レジーム選択を考察するため、マクロ経済ショックの構造と金融政策の波及メカニズムを実証的に検討してきた。まず、1)対象国のマクロ・バランス(部門別貯蓄・投資)、金融仲介システム、対外債権・債務構造の時系列的変化を把握した後、東アジア新興市場の国際資本市場とのマクロ金融リンケージおよび国内金融システム発展との相互関係を考察した。そして、2)複数の外生ショックがマクロ経済に与える影響を精査し、また、その構造変化と源泉を探った。 最終年度の年度末に予定していた最終研究会を含め、研究代表者と連携研究者・研究協力者のとりまとめ作業の一部が積み残しせざるを得なかった。このため、2014年度前半にこれらを実施し、ここまで蓄積した知見をベースに、より大型のプロジェクトを組成し、本格的な共同研究を始めるべく、今後の研究計画の策定につなげることとしたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
2013年度の年度末に連携研究者などを招集して最終研究会を開催する予定であったが、連携研究者の都合により日程調整できなかったため、未使用額が生じた。 最終研究会を次年度前半に開催することとし、最終年度の繰越額300千円を研究会開催に必要な旅費として計上する。
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Research Products
(5 results)