2011 Fiscal Year Research-status Report
カンボジアにおける貧困層向け小口健康保険制度の実証分析
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23653073
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
福井 清一 京都大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (90134197)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
三輪 加奈 釧路公立大学, 経済学部, 講師 (00552001)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 小口保険 / 貧困削減 / カンボジア / 開発援助 |
Research Abstract |
本年度は、タケオ州において小口保険SKYプログラムを実施しているNGOより、参加している世帯についての情報を提供してもらい、4ヵ村において、プログラム参加家計と非参加家計の数がほぼ同等となるよう157世帯の標本家計を抽出し、所得、資産、就業状況、家族構成、土地保有などの家計特性、家計員の健康状態、インフォーマルな保険制度の実態、SKYプログラムへの参加状況について、聞き取り調査を行った。また、分析に必要な家計員の危険回避性向、および、時間選好の数量指標を求めるため、標本家計を対象に、リスク・ゲーム、および、時間選好ゲームも同時に実施した。このようにして収集したデータ、情報をもとに、標本世帯のSKYプログラムへの参加決定要因に関して、Probit分析、および、危険回避性向と時間選好が内生変数である可能性を考慮したIV Probitの手法を援用し、計量経済学的分析を行った。その結果、Probit分析では、危険回避的であるほどSKYプログラムに積極的に参加する傾向がある一方、時間選好については、有意な影響が認められないという分析結果が得られたが、 IV Probitでは、危険回避的であるほど、また、近視眼的であるほど、参加を躊躇する傾向があるという、全く異なる分析結果が得られた。後者の分析は、操作変数の適性に問題があるため、暫定的な結果であるものの、個人の選好が保険購入に影響している可能性を示唆するユニークな分析結果であり、今後、より適切な操作変数を探し出すことが当面の課題となっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2011年度は、カンボジアで農村調査を実施し、標本数を除き、概ね、計画通りの調査研究を実施することができ、興味深い分析結果を得ることができた。 聞き取り調査世帯数については、時間と予算の制約があり、予定の半数しかできなかった。計量経済学的分析を行うに当たっては、一般に、標本数が多い方が、望ましので、この点が、2011年度の目標達成度が100%でない理由である。
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Strategy for Future Research Activity |
2012年度は、2011年度の繰越金を加えて、標本数を300世帯に増やし、前年度同様、同じ地域で、SKYプログラム参加の決定要因についての調査研究を継続する予定である。 また、本研究プロジェクト終了後は、研究成果を踏まえ、小口健康保険プログラムへの参加を促進するため、購入者の需要が高まるような保険プログラムの内容についての分析を、環境評価などで用いられている選択型コンジョイント分析の手法を援用し行う予定である。この分析にあたっては、多様な保険プログラムのメニューを提示し、潜在的保険加入者に選択させる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
上述したように、2012年度は、標本数を増やして、前年度と同様の農村世帯の調査を実施する。 実施にあたっては、カンボジア人調査助手6名、京都大学の大学院生1名を雇用し、調査の補助作業を依頼する。また、調査結果は、日本に持ち帰り、大学院生を雇用してコンピュータ入力作業を行う。 この研究調査費用の主なものは、研究代表者・研究分担者の渡航費(70万円程度)、研究補助者への謝金(66万円程度)、現地車借り上げ料(20万円程度)で、研究2011年度の繰越金と2012年度の配分金を合計した156万円程度の予算で賄えると予想している。
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Research Products
(3 results)