2011 Fiscal Year Research-status Report
商品取引所における取引売買再現による価格および流動性の実証研究
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23653080
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Research Institution | Wakayama University |
Principal Investigator |
竹内 哲治 和歌山大学, 経済学部, 准教授 (50294294)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 商品先物取引 |
Research Abstract |
平成23年度は,東京工業品取引所の注文の生データを加工処理し,数カ月分の基本統計量を考察し,Hollifield 他(2004,2006)の分析方法を用いて分析を行った。しかしながら,他の金融市場とは,特に商品先物市場に参加する投資家の投資目的や戦略に特徴があること,分析対象とした期間における時系列的な特性が存在すること,多くの先行研究で扱っている株式市場とは異なることなどに起因して,先行研究と同じような結果が得られなかった。一部の結果は先行研究から予想されるものの,一部は特異であり興味深い結果となっている。そこで,結果の頑強性等を調べるために,対象とするデータの期間について拡張を行い,引き続き分析を行っている。 商品先物取引には同一商品に同一時点で異なる満期日が発生するが,海外の市場とは異なる取引傾向が観られる。また,投機的な行動と思われる戦略が多く,その行動が他の市場と異なる結果を生んでいるのではないか検討している。さらに,マーケットメーク的な行動や現業者の行動も異なる結果を生むことが考えられ分析を進めている。データの対象期間によっては,取引量が極端に増加し,価格のトレンドが強くみられる。 また,金融市場に比べて規模が小さいため,資金が流入すると極端な変動が観られると言われている。実際,対象としたデータの期間を変更することで結果が異なり,分析対象としている期間を変更および期間の拡張を行って頑強性を検証している。 現在,これらに加えて,商品先物取引に特徴的なのか否かを調べるため,他の市場のデータも収集している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
平成23年度は,複数の市場において個別に同一の方法で流動性やデプスをもとに取引行動について分析を進めるまでを予定していたが,一市場の短期間についてだけに終わっている。 具体的には,東京工業品取引所の単独で,注文データから板の再現データを行い,取引動機となる要因として流動性やデプスを計算し,約定確率を計算し,先行研究と比べることを行った。これに関しては当初の予定通りであるが,予想された明瞭な結果が得られず,分析対象時期により結果が異なり,データの期間を拡張し再計算を行っている。このことにより,一次データの処理に際してのエラー処理や加工に当初予定していた以上の時間を要する結果となっている。また,他の市場と比べるために国内の株式市場や海外市場のデータの入手に,また,データフォーマットの違いなどに時間を費やしてしまい次の段階に至っていない。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,はじめに引き続き東京工業品取引所における先物取引の市場特性について注文データを用いてまとめる。次に先行研究と比較検討し流動性とデプス,及び約定確率について報告・ディスカッションを重ねる。その際,他の市場分析と比較検討するために先行研究者からコメントを集める予定である。同時に,韓国・中国の市場について拡張し,当初予定していた市場間の相互関係についての分析へ繋げる。 なお,東京工業品取引所の取引に関しては,日中の注文傾向を観ると場の寄付の形成が与える影響が大きいことが観測される。そのため,他市場との関連性や時系列的な分析を行う前に寄付の注文に関する分析を進める予定である。ここではアプローチの異なった同種の研究を行っている研究者と議論する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
現在,国内株式市場のTickデータや韓国および中国のデータを入手しているところである。そのためのデータ保存用の機器の購入と加工処理の費用を計上することを予定している。なお,平成23年度中に購入予定であったが,タイの洪水で大容量のHDDが高騰し,また,該当製品の見積書を業者が出したのにもかかわらず見積額で納期できなくなったこと及び納期が間に合わなかったために次年度に請求する研究費と合せて執行する予定である。 他に,東京工業品取引所の結果についてまとめ,報告する予定のための経費が必要となる。さらに,寄付の分析にあたって協力者を募る予定である。他の市場では寄付きだけで市場形成している取引所があり参考になるものと考えている。そのデータの購入費用が必要となる。付け加えて,アプローチの異なった分析をするのでそのための資料収集および会議などの出張を予定している。
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Research Products
(1 results)