2012 Fiscal Year Research-status Report
商品取引所における取引売買再現による価格および流動性の実証研究
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23653080
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Research Institution | Wakayama University |
Principal Investigator |
竹内 哲治 和歌山大学, 経済学部, 准教授 (50294294)
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Keywords | 指値注文 / 注文データ / 先物取引 / 気配 / 流動性 |
Research Abstract |
平成24年度は,前年度から取り掛かっている東京工業品取引所金先物取引における指値注文の統計的特徴に続き,注文の意思決定に影響する要因について分析を進めた。特に,流動に影響を及ぼす要因をもとに回帰分析を行った。指値の違いにおける注文傾向には市場の状態により順序があることが,ほぼ理論の示唆するところと同じであることが示された。しかしながら,それぞれの指値が最適な注文戦略であるか否かについては理論の示す符号を十分に満たすほどの結果は得られていない。これが,データ期間とその期間に価格の一方的な上昇傾向があったことに起因することが指摘され,データ期間の延長と別期間データの利用により頑強性等を調べている。 さらに,23年度までは東京工業品取引所のデータ利用に制限があり2009年までの新システム変更前のデータの分析であった。同取引所に対し,変更後のデータの利用を申請している。取引システムおよび時間の変更により注文データは飛躍的に増え,検証に有益である。ただし,1日当たりのデータでさえ膨大でPCクラスでは計算が容易でなく,分析方法やデータ処理に工夫を要している。本研究が価格と流動に関する研究であるため,より詳細で大きなデータの売買板の再現による注文の意思決定を分析することは有用である。その結果,進捗状況は遅れている。 これと並行して,始値の決定によって日中の価格と流動性が左右されていることが分析の中で観測され,ザラバ取引における指値の分析を目的としていたので,板寄せの影響とその排除について分析を進めているところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
23年度中の分析結果はWorking Paperとし論文とし,また,追加的に対象期間を変更し分析している。ただし,23年度中の分析結果が統計的に十分出なかったため,分析方法の改善と分析対象期間の延長,さらに回帰の頑強性を示すために新システム移行後のデータの利用の検討を行った。この新システムとは東京工業品取引の現行システムであり,科研申請当初は利用できなかったが,24年度に条件付きで本研究で利用が可能になった。しかしながら,条件整備に時間を要したこと,大幅な取引システムの変更と取引時間の延長を伴っておりデータが膨大であることにより研究の進捗が遅れている。特に,データは1日50倍以上にも達しており,データの移送・抽出・管理・保護が困難で,PCでの処理には限界があった。この解決に大幅な遅延を招いた。そのため,データ処理の専門家と協力し,データ加工に工夫をし,試験的な回帰分析の途中である。なお,東京工業品取引所からの利用条件はPCレベルでのデータ処理を可能にすることが第一の条件である。 また,価格変動が取引が中断する休憩や夜間にジャンプしていることが起因していることが観測され,始値の決定が日中の価格と流動性に影響することが研究過程で疑われた。そこで,当初計画していなかった板寄せの影響について追加的に調べている。板寄せの影響を除かなければ本研究が目的としているザラバにおける指値注文の意思決定と価格・流動性の分析に問題が生じると考えているからである。これも当初の計画から遅れている原因となっている。
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Strategy for Future Research Activity |
3つの分析を行う。第一に分析対象期間を変更および延長し23年度中に行った分析と比較検討する。また,指値注文の分析が本研究の目的であったため成行注文のデータは抽出していなかったが,分析モデルにおいてに利用することでモデルの効率性が高まると分かり,はじめから回帰をやり直す必要がある。第二に板寄せの与える影響を加味して分析を進める。これは取引開始付近のデータを除くことで対処してきたが,その影響を詳しく調べる必要がある。それにより本研究で目的としている価格および流動性への市況からの影響と板寄せからの影響が分離できる。第三に,新システムでのデータについて検証し,システム変更による変化とモデルの頑強性について論じる。なお,第三の作業は当初の研究計画に追加的な作業であるが,これまでの研究の検証に必要である。 また,本研究の申請時の予定では他の取引所との関係も明らかにする予定であったが,板寄せのみによる取引が行われている取引所があること,東京工業品取引所の取引時間の延長による他の海外市場との取引時間のオーバーラップが発生し,第二・第三の作業をすることで検証が可能になると思われる。 この二つの作業は今年度中に学会報告などを通して発表および公表を行う。最後の作業については論文を作成する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
新システムのデータ整備に主に使用予定である。取引所からデータ利用の条件としてデータのPCで利用可能な形に整備可能なことを示すことであったため,予めデータを購入し移送・抽出・管理・保護はできなかった。整備のための方法を探っていたが24年度中に分析可能なデータに加工がサンプルデータで試せたため本研究の期間延長を申請している。よって,次年度はデータの整備のために研究費を使用する予定である。
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Research Products
(1 results)