2011 Fiscal Year Research-status Report
確定拠出年金導入企業に関する研究-無関心層加入者対応を中心に-
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23653085
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Research Institution | Kyoto Sangyo University |
Principal Investigator |
西村 佳子 京都産業大学, 経済学部, 教授 (90319442)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 国際情報交流 / 確定拠出年金 / 加入者行動 / 雇用主の行動 |
Research Abstract |
本年度は,連携研究者である村上恵子氏(県立広島大学・経営学部・准教授),西田小百合氏(東海大学・政治経済学部・准教授)と連携しながら,確定拠出年金の加入者行動・確定拠出年金提供側(雇用主)行動についての研究成果を報告した。 「確定拠出年金加入者の資産選択と制度移行の影響」,(東海大学政治経済学部紀要,2011年9月)では,他の企業年金制度からの移行期における加入者行動に焦点を当て,2005年時点でまとまった年金原資を保有している加入者を,「確定拠出年金加入時に移行資金の投資を行い,それに加えて積み立て方式で年金を運用している加入者」,2005年時点ではまとまった年金原資を保有していない加入者を,「積み立て方式で年金を運用している加入者」として,両者の資産選択行動に違いがないかどうかについて調べた。確定拠出年金加入者の中に,安全資産に偏ったポートフォリオを保有する加入者が高い比率で存在し,それが制度移行に起因する一時的な行動であるかどうかを確認する必要があったが,年金制度の移行による一時的な要因ではなく,その他の要因による可能性が高いということが明らかになった。 「確定拠出年金導入企業の運用資産提供行動――加入者調査データによる分析――」,(大銀協フォーラム研究助成論文集,2012年2月)では,雇用主の確定拠出年金提供に対する姿勢(熟練度や熱心さ)と提供される選択肢の関係について分析を行った結果を報告した。分析の結果,他の退職給付制度や年金からの資金の移換がなく,確定拠出年金の導入時期が遅く,担当者の熱心でかつ熟練度が高く,従業員数が少ない企業は,元本確保型金融商品に偏らない運用資産メニューが提示する傾向があることがわかった。来年度以降の調査・分析を進める足がかりとなる基本的な分析結果が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は,連携研究者である村上恵子氏(県立広島大学・経営学部・准教授),西田小百合氏(東海大学・政治経済学部・准教授)と連携しながら, (1)確定拠出年金導入企業像を,有価証券報告書など財務データなど公表されているデータを用いて明らかにする,(2)確定拠出年金導入企業へのヒアリング実施のための質問項目の作成,(3)(2)で作成した質問項目の妥当性を検討するために,試験的に数社の企業に対するヒアリングの実施する,という予定であった。研究は順調に進んでおり,(1)については,雇用主の行動を明らかにする第一歩として,既存のNPO法人が実施したアンケート調査のデータを用いて分析を進めた。この結果は,確定拠出年金導入企業の運用資産提供行動――加入者調査データによる分析――」,大銀協フォーラム研究助成論文集(2012年2月)において,雇用主の確定拠出年金提供に対する姿勢(熟練度や熱心さ)と提供される選択肢の関係について分析を行った結果を報告した。分析の結果,全体として確定拠出年金で提供される資産に占める元本確保金融資産の割合は高く,他の退職給付制度や年金からの資金の移換がなく,確定拠出年金の導入時期が遅く,担当者の熱心でかつ熟練度が高く,従業員数が少ない企業は,元本確保型金融商品に偏らない運用資産メニューが提示する傾向があることがわかった。(2)と(3)については,ヒアリング項目の追加・修正を行いながら,すでに15社の企業で聞き取り調査を実施した。次年度以降,分析の目的に沿ったデータを得るための本格的な聞き取り調査を行う準備ができたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
研究期間2年目は,数十社程度の企業を目標に,(1)加入者やその確定拠出年金運用状況についてどのような問題を感じているか,(2)(1)の問題に対する対応,(3)運用資産メニュー,(4)運用を放棄している加入者に対する対応や制度などについて,の詳細なヒアリング調査を行った上で,データの集計作業を行い,研究期間1年目に行った財務データなどの既存のデータと併せて分析用のデータを作成する。作成したデータは,計量分析モデルによる分析を行う。単なるアンケート調査ではなくヒアリング調査を実施する理由は,企業の確定拠出年金担当者の知識にばらつきがあり、質問の意図が十分に理解されなどの懸念があるためである。また,確定拠出年金導入企業は企業規模や業種が多岐にわたり,加入者向けのサービスや教育体制にもばらつきがあり,画一的なアンケートの質問項目が作りにくい。このような理由により,聞き取り調査により状況を正確に把握することがよい分析結果を得るために欠かせない作業だと考える。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究費は,研究代表者および連携研究者がヒアリング調査を行う交通費を中心として使用する計画である。既存のデータでは明らかにできなかった,(1)加入者やその確定拠出年金運用状況についてどのような問題を感じているか,(2)(1)の問題に対する対応,(3)運用資産メニュー,(4)運用を放棄している加入者に対する対応や制度などについての詳細なヒアリングを実施し,研究を進めたい。
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Research Products
(3 results)