2012 Fiscal Year Research-status Report
確定拠出年金導入企業に関する研究-無関心層加入者対応を中心に-
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23653085
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Research Institution | Kyoto Sangyo University |
Principal Investigator |
西村 佳子 京都産業大学, 経済学部, 教授 (90319442)
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Keywords | 確定拠出年金導入企業 / 移換資産 |
Research Abstract |
この研究は、確定拠出年金導入企業側の行動に焦点を当てた分析を行うことが目的であり、今年度は、(1)確定拠出年金導入企業がどのような判断で確定拠出年金を導入したのか、(2)加入者動向をどう把握し何を問題にしているのか、について明らかにする予定であった。しかし、厚生労働省の保有する確定拠出年金に関するデータの情報開示が受けられない等、データ入手上の様々な制約があり、まずは、確定拠出年金加入者調査のデータによる分析を行うこととした。確定拠出年金導入企業について明らかになったことは、以下の通りである。 確定拠出年金導入企業は、加入者に運用資産メニューを提示し、加入者は制約の下で運用を行う。雇用主(企業)側の行動を明らかにする第一歩として、企業型確定拠出年金担当者に対するアンケート調査のデータを用いて、雇用主の確定拠出年金提供に対する姿勢(熟練度や熱心さ)と提供される選択肢の関係について分析を行った。分析の結果、他の退職給付制度や年金からの資金の移換がなく、確定拠出年金の導入時期が遅く、担当者の熱心でかつ熟練度が高く、従業員数が少ない企業は、元本確保型金融商品に偏らない運用資産メニューを提示する傾向があることがわかった。反対に、移換資産があり、確定拠出年金の導入時期が早かった企業は、確定拠出年金の運用資産メニューに占める元本保証型金融商品の割合が高い傾向がある。 次年度以降は、現在まだ入手できていないより詳細なデータの入手に努め、元本確保型金融商品中心で運用が行われている確定拠出年金について、導入企業側の行動との関係についてより詳細な分析を進める予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は,70社程度の企業を対象に,(1)加入者やその確定拠出年金運用状況についてどのような問題を感じているか,(2)(1)の問題に対する対応,(3)運用を放棄している加入者に対する対応や制度などについての詳細なヒアリング調査を行った上で,データの集計作業を行い分析に臨む予定であった。ヒアリング調査において(1)(2)(3)に関する情報は得られたものの、肝心の資産メニューに提示されている資産(ファンド・預金等)の時系列残高の開示に関して、企業の協力を得ることが困難であった。そこで、厚生労働省の保有するデータの開示を申請したが、ファンド名等のデータが不開示となった。 このような理由により、当初計画していた手法により研究が進められるかどうか不透明な点も出ているが、確定拠出年金の導入企業側の行動を明らかにするという研究目的を達成するために、現時点で利用可能な調査データ等(企業型確定拠出年金担当者に対するアンケート調査のデータ等)を用いて、雇用主の確定拠出年金提供に対する姿勢(熟練度や熱心さ)と提供される選択肢の関係について分析を行い、中間的な研究成果「確定拠出年金導入企業の運用資産提供行動―担当者調査データによる分析―」としてまとめた。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は在外研究により本研究は一時中断する予定である。しかし、連携研究者と協力して継続的に確定拠出年金導入企業に対して情報開示への協力をお願いし、また厚生労働省の保有するデータの開示に対する開示申請(異議申し立て等)を行うことにより、研究再開時のスムーズな研究の進捗を目指すつもりである。情報の開示請求費用・開示費用にかかる費用は多額であるため、本年度の研究費の一部を繰り越してデータの開示に備えることとした。当初から予定していた、研究報告にかかる費用とは別に、繰り越しを行った費用をにてデータ開示費用を賄うつもりである。 研究再開時には、アンケートなどの調査データの分析とともに、より客観性の高い市場データと資産残高データによる分析結果を併せて、確定拠出年金の導入企業側の行動を明らかにしたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度は、厚生労働省の保有する確定拠出年金関連の時系列データを開示を受けることを念頭に、開示に掛かる費用を算定していたが、今年度はデータの開示が受けられなかった。情報開示を受けるために再度の申請の準備を行っており、次年度に情報公開が受けられた場合に備えて繰り越しを行った。
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Research Products
(1 results)