2012 Fiscal Year Research-status Report
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23653094
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
柳田 卓爾 山口大学, 経済学部, 准教授 (10303041)
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Keywords | 持株会社 |
Research Abstract |
平成24年度においては、(1)持株会社の経営成果を測定する際に用いる尺度の選択、及び、(2)該当する尺度の得点分布の把握を予定していた。(1)については、一定の成果を得ることができ、(2)については、現在、進行中である。(1)については、平成23年度に、株価指標と会計指標を用いた類似研究が行われていることをサーベイした。しかし、更なる既存研究の検討の結果、(a)株価指標の場合、その指標の示すものは、あくまで将来収益についての株式市場の予測であって(滝澤ほか, 2012)、今回の経営成果の測定尺度としてはふさわしくないこと、(b)ROAなどの会計指標を用いる場合、個別企業の財務ポリシーなどによって、指標にバイアスの生じる可能性があり、付加価値指標である事業利益などを用いた方が望ましいとの議論(中谷, 1983)のあることが分かった。尺度の選択作業については、研究結果を左右する重要事項であるので、引き続き、慎重に行っていく予定である。(2)については、尺度得点の分布を把握する準備段階として、持株会社をリストアップするために、持株会社数を調査した既存研究のサーベイを行った。これらの既存研究によると、上場企業については、おおよそ1割弱が、持株会社形態を採用しているようである。また、下谷(2009)に従って、持株会社数を数える作業を行った(2012秋)。この調査によると、下谷(2009)の調査と比較して、純粋持株会社と確認できた数は265→276へと、11社増であることが分かった。現在、抽出された純粋持株会社全体についての記述統計を整えるための作業を、継続中である。また、「現在までの達成度」においても述べるが、「持株会社とは何か」についての理論研究を、詳細に行うことが不可欠であることが分かり、継続中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成24年度は、(1)経営成果を測定する尺度の選択、(2)分析対象となる持株会社のリストアップ、(3)分析対象となる持株会社サンプルの記述統計分析、を目標としていた。(1)については、一定の成果があったと考えている。しかし、(2)については、いくつかの解決すべき問題に直面している。その最大のものは、明確な持株会社のリストの作成の難しさにある。既存研究においても、そのリストアップの手続きには、再現が難しいものが少なくない。また、持株会社の定義についても、議論が分かれていたり、明確な線引きの困難なものが多い。持株会社の数を数えるという作業レベルにおいて、持株会社の定義が共有されていない。そのため、「そもそも、持株会社とは何なのか」という理論研究の必要性と、その定義の確定作業を、新たに行うことが不可欠であることが分かった。この点が、研究の進捗を、「やや」遅らせている理由である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は、当初の研究実施計画では、(1)理論モデルの構築、(2)持株会社の経営成果の実証分析(多変量解析)であった。しかし、「現在までの達成度」でも述べたように、「持株会社の定義」の困難により、分析対象となるサンプルの抽出ができていない。この問題を解決するために、平成24年度より行ってきた企業集団(企業グループ)に関する研究を整理・参考にして、分析対象となる持株会社のリストアップを、早い段階で実施する。(1)理論モデルの構築に関しては、類似研究のサーベイから、モデル構築が可能であることが分かっている。また、(2)持株会社の経営成果の実証分析(多変量解析)については、グループ間の差の検定をはじめとして、複数の実証分析を行う予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
上記で述べた課題解決のための「持株会社の定義」の研究、並びに実証分析手法の検討のための図書費(20,000円)、実証分析に利用するデータの収集のための日経テレコン利用料金(100,000円)、これまで収集した論文等の資料整理のためのファイル類(10,000円)、調査・報告のための旅費(25,5000円)、データベース作成や資料整理のための補助業務のための人件費(60,000円)、そして、最終年度であるので、一般向け広報のためのパンフレット作成費(55,000円)を計上している。 なお、次年度使用額(B-A)は、「該当なし」である。
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