2011 Fiscal Year Research-status Report
ジェネリック医薬品普及に向けた製造・流通・消費者サイドにわたる経営学的調査研究
Project/Area Number |
23653095
|
Research Institution | Kochi University |
Principal Investigator |
伊丹 清 高知大学, 教育研究部人文社会科学系, 教授 (20176275)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
|
Keywords | ジェネリック医薬品 / 後発薬 / ジェネリック医薬品メーカー / 医薬品卸業 / 医薬品卸企業 / 製薬業界 / 製薬企業 |
Research Abstract |
アンケート調査に先立ち調査項目を精査するために、厚生労働省、日本ジェネリック製薬協会、日本医薬品卸業連合会、日本ジェネリック医薬品販社協会、及び全国各地のジェネリック医薬品メーカーと医薬品卸売企業に聞き取り調査を行った。研究者によるこのような調査はあまり行われておらず、調査項目の精査のためにとどまらず十分意義のあるものであった。 その結果、ジェネリック医薬品業界を取り巻く環境は、研究計画立案時点から変化しつつあったものの、その動きが加速していることが判明した。それは、(1)海外大手先発薬メーカーならびに日本の先発薬メーカーによるジェネリック医薬品への参入と、それに伴う日本のジェネリック医薬品メーカーとの提携や買収、(2)先発薬メーカーの参入に伴い先発薬中心の医薬品卸企業のジェネリック医薬品の取扱いと医薬品卸企業の買収・合併といった再編、(3)海外大手ジェネリック医薬品メーカーの日本への本格参入、(4)海外の大手先発薬及びジェネリック医薬品メーカーによる医薬品ならびに原薬メーカーの買収や新興国への進出などである。 一方、先の聞き取り調査の過程で、隣接県でもジェネリック医薬品の普及状況に差があり、文献では把握できない各都道府県の個別事情があることが判明した。それゆえ、可能な限り各都道府県の薬事関連の部署にも聞き取り調査を行った。各都道府県の普及率の違いの原因は、行政側の取り組みの差などで一般的に説明できない。現時点の調査では、全体像は把握できていないが、普及率の格差縮小は今後のさらなるジェネリック医薬品普及に向けた大きな要因のひとつになると考えられ、重要性が高いと思われる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
昨春、研究計画作成時点では予想もできなかった、東日本大震災とそれに伴う福島第1原発事故が発生した。それゆえ、東北、北関東は聞き取り調査に伺うのもはばかれ、聞き取り調査範囲等研究計画の見直しに時間を要した。くわえて、ジェネリック医薬品業界では、テバ社による大洋薬品工業の買収及び興和テバ株式会社の完全子会社化といった大きな状況変化があり、聞き取り調査項目についても再検討が必要となった。以上のような理由から、研究の進捗状況は現在やや遅れ気味となっている。
|
Strategy for Future Research Activity |
研究計画に従いアンケート調査を中心に研究を進める。ただし、昨年の調査状況等を踏まえ、研究計画の若干修正を検討している。 ひとつは、昨春の東日本大震災及び福島第1原発事故を踏まえ、医薬品メーカーならびに医薬品卸企業への「影響」、「今後の対応策の有無」、「具体的対応策」等をアンケート項目に加え、震災等の災害による医薬品の供給体制の問題など将来に伝えるべき課題についても研究対象に含めることである。 また、日本のジェネリック医薬品メーカーは原薬の多くを輸入に頼っているが、現在、国際的な大手製薬メーカーが原薬メーカーを傘下に入れており、くわえて韓国、中国、インドの原薬メーカーの対日進出意欲も高く、製品のレベルも上がっている。それゆえ、日本のジェネリック医薬品メーカーの原薬の入手状況についても調査を行う考えである。 さらに、各都道府県でジェネリック医薬品の普及状況に差があるが、普及率の格差縮小はさらなるジェネリック医薬品普及に向けた大きな要因のひとつであると考えられる。したがって、各都道府県の個別事情等について薬事関連の部署にアンケート調査を追加で実施し、各都道府県の普及率の違いの原因を明確にすることを考えている。 一方、消費者サイドのアンケート調査については、様々な聞き取り調査の結果、年代別、男女別、所得別、急性期の疾病か慢性病かの違い等により、ジェネリック医薬品の選択意識は大きく異なる可能性があるとの指摘を受けた。個人の研究でそのような違いを含めた大がかりな調査は不可能であると思われ、上記各都道府県別の普及率の違いの状況を把握する調査研究を優先する方向で検討している。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度、科研費の減額の可能性が示されていたことから、先に交付された7割の金額をもとに研究を開始した。くわえて、東日本大震災とそれに伴う福島第1原発事故、さらに、テバ社による大洋薬品工業の買収及び興和テバ株式会社の完全子会社化といったジェネリック医薬品業界に大きな状況変化があり、聞き取り調査範囲や質問項目等について研究計画を再検討する必要が生じたため研究計画全体がやや遅れているが、次年度執行する予定である。
|