2012 Fiscal Year Annual Research Report
年金債務と財務政策:株主・従業員間の利害対立と日本的経営財務
Project/Area Number |
23653096
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
内田 交謹 九州大学, 経済学研究科(研究院), 准教授 (80305820)
|
Keywords | 年金債務 / リスク / 投資決定 / 企業価値 / ストックオプション |
Research Abstract |
これまで日本企業は米国企業と比べて、従業員の利害を重視する傾向にあると言われてきた。本研究課題ではOBを含めた従業員集団の金銭的利害を表すものとして年金債務に注目し、年金債務が企業のリスク及び行動に影響しているかを包括的に検証することを目標にしていた。具体的には、①年金資産・債務のリスクが株式のリスクに影響しているか? ②年金債務が企業価値に影響しているか? ③年金債務が企業の投資行動に影響しているか? ④ストックオプションによるリスク・テイキングが年金債務と関係しているか? について分析することを目標としていた。 ①については、前年度までに作成した年金資産・債務及び企業の資本コストに関するデータベースの修正を行ったうえで、米国の先行研究に倣った分析を行った結果、日本では年金資産・債務のリスクが株式のリスクに影響しているという明確な結果は得られなかった。この結果について、引き続き解釈及び追加分析を検討している。②と③については、合併・買収やリストラクチャリングなどの企業の投資データベースを完成させたうえでパイロット・テストを行い、年金債務と企業価値の間に負の関係があることが明らかになった。引き続き、年金債務が投資行動に影響し、その結果企業価値に影響するというストーリーについて分析を行っている。④については、米国の研究結果と異なり、ストックオプション導入時に経営者のリスク・テイキングが増大していないことを明らかにしたうえで、それが年金債務の影響によるものかを分析したところ、明確な関係は得られなかった。全てのテーマについて、実務家へのインタビュー調査を実施して、より現実的に妥当な解釈について検討した。また④については、学会及び研究会報告を行っている。 今後は②と③についての分析を進め、投資行動を軸に、なぜ年金債務が企業価値に影響を与えるのかを詳細に検討する計画である。
|
Research Products
(4 results)