2011 Fiscal Year Research-status Report
プログラム化された企業変革 -その背景、現状と成功要因についての研究-
Project/Area Number |
23653097
|
Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
出口 将人 名古屋市立大学, 大学院経済学研究科, 准教授 (40305553)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
Keywords | 企業経営 |
Research Abstract |
本研究課題の理論的バックボーンの一つである、いわゆる新制度派の組織理論についての文献レビューに注力した。より具体的には、第一に、Meyer & Rowan(1977)、DiMaggio & Powell(1983)やScott(2000,2008)などの基本文献をあらためて精読し、他のディシプリンとのかかわりを念頭におきつつ、この理論の起源や展開、本質や課題について整理した。 第二に、本研究課題で予定している質問票調査の設計のために、経営手法にかかわる諸々のイノベーション(たとえば、TQM、役員報酬システムや買収対策など)にかんして、その採用をうながす制度的圧力とそれによってえられた成果との関係を実証しようとした先行研究についてレビューした。このような文献レビューの成果として、そうした関係についての仮説とともに、その検証のための質問項目も少なからず特定することができた。 こうした理論的な研究と並行して、具体的な調査対象をどこに設定するのかについても、検討してきた。具体的には、研究課題の題目になっている「プログラム化された企業変革」ではあまりにも抽象的すぎるので、より具体的な経営手法にフォーカスするべきと考え、(1)ここ数十年に流行(浸透)し、(2)その導入、実践がある程度定型化されており、かつ(3)その成果が出たとみなされるものとして、どのような経営手法があるかを探究してきた。これについては、まだ一つに絞りきれていないが、上記の3つの条件をみたすものとして、さしあたっては「成果主義の人事制度の導入」、「社内情報システム(ナレッジ・マネジメント・システム)の構築」、「組織のフラット化(エンパワーメントの促進)」を候補として取りあげ、いずれが本研究課題の具体的な対象として適切かを主要な経済誌や新聞などののアーカイブをもとに吟味してきた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
上記の「研究実績の概要」でも述べたように、文献レビューをつうじて大まかな仮説や質問項目は固まりつつある。しかし、具体的な調査対象として、どのような経営手法にフォーカスするべきかを決めかねており、それが達成度の遅れにつながっている。 調査対象が明確にできていないため、それにかかわる実践の伝播プロセスについての調査、分析が十分に進んでいない。その結果、具体的な質問項目を確定することができず、本研究課題の核である質問票調査の実施時期に遅れが生じる見込みとなっている。ただし一方では、調査対象の候補はかなり絞られてきており、その絞りこみのプロセスにおいて、それぞれの伝播プロセスについて予備的な調査をおこなっている。したがって、調査対象として適切な経営手法を決定できさえすれば、遅れは最小限にとどめることができると考えられる。 そもそもこのような事態が生じたのは、当初の研究計画に甘さがあったためであるとことは否定できない。その点は反省すべきである。しかし、よりよい研究成果を生みだすためには、ここで先走って不十分な調査をおこなうよりも、より適切な調査対象の選択を優先すべきであると考え、現時点での多少の遅れについては目をつぶることにした。
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度前半から中盤においては、前年度の研究内容(先行研究のレビューおよび公表資料の調査、分析)を継続しつつ、具体的な研究対象の決定および質問票調査の完成を目指す。この過程では、研究会等での報告をつうじて、調査にかかわるデザインをブラッシュアップしたいと考えている。 本年度の後期から来年度の前期にかけて、質問票調査の送付、回収、そしてデータ入力を完了させたい。この過程では、外部の専門業者を可能なかぎり利用することで、作業を正確かつ迅速におこないたい。 来年度においては、質問票調査によってえられたデータを整理、分析し、その成果を論文や学会報告といったかたちで公表する。そして、それらにたいしてえられたコメントをもとに、分析をより精緻化するとともに、さらなる研究課題につなげていきたい。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度においては、主として以下の3点にかんして研究費を使用する予定である。 第一に、質問票調査の送付やデータ入力にかかわるもの。第二に、研究対象となる経営手法の伝播のプロセスを跡づけるためのアーカイブ・データ(電子データ)の購入にかかわるもの。第三に、本研究課題にかかわる学術的な書籍や資料の購入にかかわるものである。 これらのほかに、学会参加にかかわる旅費、データの処理や整理にかかわる備品や消耗品についても必要に応じて研究費を使用する予定である。
|