2013 Fiscal Year Research-status Report
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23653103
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
稲葉 陽二 日本大学, 法学部, 教授 (30366520)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
金光 淳 京都産業大学, 経営学部, 准教授 (60414075)
北見 幸一 北海道大学, その他の研究科, 准教授 (90455626)
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Keywords | 企業不祥事 / 社会関係資本 / ソーシャル・キャピタル |
Research Abstract |
1.東証1部上場企業データベースによる分析:2000年及び2010年における東証一部上場企業役員データベース作成し,このデータベースから,役員(取締役・監査役)構成を,社長を中心とした社会関係資本の観点から考察した。具体的には,社長の在任期間,社長と他の役員との年齢差,社長と序列2の役員との年齢差,役員保有株式に占める社長保有株式数の比率,生え抜き度を役員における社長の企業内における社会関係資本の代理変数として算出し,ROA,負債比率,売上高伸び率等の企業パフォーマンス指標との相関(N 2000年1487,2010年1718)をみた。社長と他の取締役との年齢差がひらけばひらくほど業績はよい。つまり,社会関係資本からみたワンマン度があがるほど業績はよい。ただし,社長の年齢は業績とは負の相関がある。また,役員全体の生え抜き度があがると売上高の成長率は低くなる。 2.ケーススタディによる分析:東証一部上場企業社長データベースによれば,企業内でのワンマン度の上昇は好業績と相関しているが,これは不祥事を起こしていない企業のケースであるため,個別の不祥事の事例のケーススタディ(イトマン,西武鉄道,カネボウ,東京スタイル)で同様の検証をした。個別企業における時系列データによる相関分析では,企業内でのワンマン度が上がるにしたがい,業績指標が顕著に悪化し,統計的に有意かつ強い相関がみられた。 3.企業不祥事データの拡充と社会関係資本の観点からの分析:上記のケーススタディは4社のデータのみを扱っていたが,2000年と2010年に関し,新聞記事から2000年137件,2010年180件,企業不祥事事典から147件,計457件の不祥事事案を採集し,それぞれの企業の社会関係資本(凝集性,開いた組織か閉じた組織か)の観点から分類し,企業不祥事のパターンと社会関係資本との間に関連がみられるかを検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上場企業役員データベースの作成に1年9か月を要したため,当初計画からほぼ3カ月の遅れがでたが,分析は順調に進み,当初計画における以下の仮説の検証をほぼ終了することができた。具体的には,東証1部上場企業につき2000年と2010年時点での役員データベースを作成し,それに基づき,企業のタイプを凝集性と外に対する閉鎖性の2つの観点から4つのタイプに分類した。また,2000年137件,2010年180件,企業不祥事事典から147件,計457件の不祥事事案を①製品・サービスの問題か,企業・組織の問題か,②規範逸脱型不祥事か対策不備型不祥事か,の2つの観点から4つのタイプに分類し,これを企業タイプと対照させた。最終報告は現在作成中であるが,実証研究の結果は仮説と基本的に整合している。 仮説1:外に対し閉鎖性が強い組織では,不祥事の頻度が高い。仮説2:凝集性が高く,かつ外に対して閉鎖性が強い組織は,組織の規範逸脱行為による不祥事の頻度が高い。仮説3:凝集性が低く,かつ外に対して閉鎖性が強い組織は,製品に関する不具合に起因する不祥事の頻度が高い。仮説4:凝集性が高く,かつ外に対して開かれた組織では,不祥事の頻度が低い。 この過程で,東証1部上場企業全体の役員構成,社長の在任期間,社長と他の役員との年齢差,社長と序列2の役員との年齢差,役員保有株式に占める社長保有株式数の比率,生え抜き度など役員における社長の企業内社会関係資本の代理変数を算出し,ROA,負債比率,売上高伸び率等の企業パフォーマンス指標との相関(N 2000年1487,2010年1718)をみた。また,相関分析に加えてOLSによる分析も実施し,ほぼ同様の結果を得た。
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Strategy for Future Research Activity |
研究の結果をまとめた論文を作成中であり,この結果を踏まえて,外部の識者も含めた検討会を開催する。また,研究成果をまとめ,書籍として刊行することを目指す。研究成果のまとめでは,実証結果から企業不祥事対策への提言を行う。 現在予想される提言は,①企業に経営組織は凝集性を維持しつつ,外に開かれたものであるべき,②過度の凝集性は不祥事のリスクを高めるので,是正すべき(具体的には生え抜きだけで経営すべきではない。),③過度に閉じた組織は不祥事のリスクを高めるので、開かれた組織づくりを行うべき(過度のワンマン経営は避けるべき),④役員構成は外部取締役・外部監査役を過半とするべき,⑤業務執行の責任者(社長)と取締役会議長の兼務を避けるべき,などである。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
3年間にわたって企業不祥事データを作成し,2013年よりデータベースを用いた研究に着手した。その成果を出版することを意図しており,そのための最終研究会を2014年4月~6月期に実施したいと考えるため。 外部講師(コメンテーター)を招いた研究会費用。旅費交通費,講師謝金,会合費を予定している。
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