2011 Fiscal Year Research-status Report
財務報告における環境負債情報の開示を規定する要因の研究
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23653116
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Research Institution | Tokyo City University |
Principal Investigator |
野田 昭宏 東京都市大学, 環境情報学部, 講師 (40350235)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
阪 智香 関西学院大学, 商学部, 教授 (10309403)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 環境負債 / 会計報告 / 企業ガバナンス / 環境会計 / 情報開示 |
Research Abstract |
本研究は,財務報告における環境負債情報開示の水準に影響を及ぼす要因を解明し,環境負債にかかわる財務報告制度の設計に資する知見を提供することを目的とする。 平成23年度は,(1)次年度以降に実施を予定している調査分析のためのモデル分析と,(2) 環境浄化負債規模の推計および調査対象企業の特定を計画した。モデル分析は,環境浄化負債情報の受け渡しに関する利害関係者間の意思決定に関して概念的なモデルを分析した。また,環境浄化負債の推計と調査対象企業の特定は,土壌汚染およびアスベスト被害に関わる資産除去債務を対象として,その適用企業と報告額の調査を実施した。 第1の達成目標であるモデル分析は,企業の所有構造が環境負債情報の開示決定に与える変化について理論的含意を導くことを目的に分析的手法を用いて実施した。業績評価を通じた経営者コントロールが環境負債に関する3つの側面,すなわち,利害関係者間の環境修復コスト分担に与える効果と,資産除去債務の測定における環境汚染発生に及ぼす影響,環境負債の自発的開示を阻害する効果,をもつことを明らかにした。 第2の達成目標である環境浄化負債規模の推計と調査対象企業の特定は,2つの側面から研究を進めた。ひとつは,土壌汚染に起因する潜在的な環境負債を保有する企業の特定とその規模の推計を実施したものであり,調査が当初の計画見積もりより進展したため,さらにその潜在的環境負債の価値関連性について調査を実施した。第2の側面は,企業会計基準第18号適用開始年度の有価証券報告書を調査したものであり,資産除去債務に関わる潜在的な環境負債をもつ日本企業の特定とその負債規模を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の環境負債の開示実態の解明において最も困難な点のひとつは,企業内部の自発的な情報開示の動機を決定しているガバナンス要因をモデル化して提示する点にあった。この観点から,本年度におけるモデル分析の成果は第2年度および第3年度における調査仮説の設定に直接的な含意をもつものであり,本研究の最終的なフィーザビリティを著しく向上させるものであると考えられる。 さらに,初年度目標に掲げた潜在的環境負債保有企業の特定と,環境浄化負債の実態分析についても,第2年における調査対象企業の特定のための不可欠の過程であり,PRTRデータにもとづいた潜在的土壌汚染リスク推定と,有価証券報告書を通じた資産除去債務の調査に成功した点は調査の進展を示すものであった。したがって,おおむね順調に推移している判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度は,特定した潜在的な環境浄化負債をもつ企業の財務報告における環境情報の開示水準を定量化する手法を開発し,調査対象企業の開示実態に関する分析を実施する。具体的には,(1) 開示状況を量的に把握するための統合指標を作成する,(2) 調査対象企業の有価証券報告書に含まれる環境負債関連情報(定性情報・定量情報)の内容と当該記載箇所を抽出する,(3) 統合指標にもとづいた定量化作業を実施する,という手順にしたがって研究を進める。 本段階では,調査対象企業の財務報告における開示実態を明らかにする目的から記述的分析を実施するのに加え,平成23年度のモデル分析の結果にもとづく調査仮説の設定とデータ収集および解析作業を開始する。 ただし,一部,当初計画より進捗したために平成23年度に得られた調査結果に関しては,当初予定していた最終年度をまたず,平成24年内に実施することとしたい。具体的には,外国における学会報告2件,国内報告4件をおこない,調査結果についてコメントを得て,本研究の調整を実施する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年は,調査に用いるデータの収集に重点をおくため,その収集に要する支出が研究費に占める割合が大きくなる予定である。企業に環境負債を生じさせる環境リスクデータと財務報告における環境負債情報開示データは,既存の財務データ等では入手不可能なため,有価証券報告書等を一社ずつ調査する必要があり,これらのデータ収集・入力等の作業が必要であるためである。このための謝金として研究費を使用する予定である。 また,成果報告を早期実施するように変更したため,それにともない平成24年の旅費が当初予定額を超過することが予想される。この理由から,平成25年度に使用を予定していた研究費のうち20万円を平成24年度に使用することとしたい。
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Research Products
(8 results)