2013 Fiscal Year Annual Research Report
財務報告における環境負債情報の開示を規定する要因の研究
Project/Area Number |
23653116
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Research Institution | Tokyo City University |
Principal Investigator |
野田 昭宏 東京都市大学, 環境学部, 講師 (40350235)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
阪 智香 関西学院大学, 商学部, 教授 (10309403)
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Keywords | 会計学 / 環境会計 / 環境負債 |
Research Abstract |
本研究は,財務報告における環境負債情報の開示水準を規定する要因を解明するための理論モデルの構築と定量分析を実施し,3つの主要な研究成果を得た。 第1に,環境負債情報の開示する実務慣習が,行政機関による環境汚染の規制に依存して形成されるモデルを構築することに成功した。環境汚染放置コストにくらべて規制機関が企業の汚染を調査監督するのに要するコストが十分に大きいとき,環境負債を自発的に開示する実務慣行は淘汰され,社会において環境負債を開示しない企業によって社会が占められるようになり,企業活動から生じた汚染は放置されることを明らかにした。 第2に,環境負債認識において債務性概念が,企業の資金調達における将来の企業行動に信憑性を与えるための戦略的な観点から形成された可能性を示唆するモデルを提示した。潜在的な環境汚染を発生させる企業は,推定的債務として環境負債を認識することで,将来の潜在的な汚染除去義務を履行する以外に現実的な選択肢をもたない状況を積極的につくりだす可能性がある。このようなコミットメントは,将来の債務不履行が生じる可能性を伝達し,借入契約において貸付者を低水準の利率要求へ誘導する手段として用いられることを明らかにした。 第3に,環境負債報告に関する企業決定が,広範な企業利害関係者の情報ニーズに依存していることを実証研究によって明らかにした。企業の経済的業績,環境負債情報を含む社会的責任の履行成果,および社会的責任情報の開示が互いに階層的な関係をもち,これら3つの要素に対して,異なる要求をもつ利害関係者が,それぞれ関心をもつ情報の開示に対して影響を及ぼしている証拠を提示した。
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Research Products
(15 results)