2011 Fiscal Year Research-status Report
地域資源としての伝統的地域劇場:東北地方の事例から
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23653120
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
小野澤 章子 岩手大学, 人文社会科学部, 准教授 (30291850)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 芝居小屋 / 地域資源 |
Research Abstract |
本研究では、明治初頭から昭和初期に日本各地に設置され、その当初の目的が芝居(演劇)上演のための劇場を「芝居小屋」と定義し、日本各地に20館ほど現存するといわれる芝居小屋の価値を特に社会的な視点から考察するものである。このような芝居小屋は最盛期(明治後半から大正期といわれる)には全国に数千あったとも指摘されているが、ほとんどが社会の変化、人々の変化のなかで消えていったことになる。 現存する芝居小屋には、国の重要文化財の5館も含まれ(康楽館、旧広瀬座、呉服座、八千代座、金丸座)、また全国の芝居小屋が連携しその資源としての価値を再評価する動きなども高まっている。例えば、鉱山の厚生施設として設置された秋田県小坂町の康楽館(明治43年落成)は、鉱山の衰退とともに廃れ、一時期はほとんど使用されない状況であったものの、住民の保存運動によって修復オープンした昭和61年以降は、常設公演などを積極的に行い、重要な観光資源として利用されている。 一方で、消えていった多くの芝居小屋の衰退の背景としては、当初の主要なコンテンツであった歌舞伎の衰退、西洋式劇場・西洋芸術(写実的演劇など)の浸透、第二次世界大戦の影響、戦後の娯楽嗜好の変化(テレビの普及)などが指摘できる。 明治初頭には芝居小屋があったことが記録に残る岩手県盛岡市においても、大正初期に3つの芝居小屋が存在したことが資料から判明した。その内2座は映画館に転向後に廃館し、残る1座も15年にわたる廃屋状態の期間を経て取り壊され(現代的な公共文化施設として再建されているものの)、現在の盛岡は芝居小屋が存在しない状況となっている。それらの変遷をたどると、近代以降の地域社会において芝居小屋が多くの地域住民と関わりながら発展し、また人々の嗜好の変化、都市の発展や経済状況の変化のなかで衰退していったことが指摘できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
文献・資料、現地調査などから、芝居小屋の全体像の把握(概念整理、地域産業との関係など)を行うことができた。また、類型化した芝居小屋のうちいくつかの事例については(康楽館、旧盛岡劇場など)、その経緯などの詳細な情報収集を行い理解を深めた。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、芝居小屋の地域資源としての価値をさらに明確にするために、現在の芝居小屋の運営状況やそれぞれの地域における利用状況を把握する。さらに、衰退し廃館した芝居小屋についても利用されていた状況などの把握に努める。それらの背景となる近代以降の地域社会の変化も具体的に検討し、これらの特徴から東北地方の特徴の抽出を試みる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
以上のような研究を実際に行うために、文献・資料収集(物品費、旅費)、収集資料の整理(謝金)、結果の公表(論文印刷のための物品費)などを使用する計画である。その際、23年度に未使用となった経費(入手できなかった文献の費用など)を含めて執行していく。
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