2011 Fiscal Year Research-status Report
在日ブラジル人児童生徒の保護者を中心にした成人学習:当事者の自己啓発を目指して
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23653122
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
ヤマモト・ルシア エミコ 静岡大学, 教育学部, 講師 (20451495)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宇都宮 裕章 静岡大学, 教育学部, 准教授 (30276191)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 成人学習 / 在日ブラジル人保護者 / 自己啓発 |
Research Abstract |
本研究は困難な状況に立たされているブラジル人保護者らを対象にして、この厳しい経済・社会的現状からの脱却が可能かを検討する。本研究は研究実践の方法を用いて地域社会に根差した成人教育の実践を遂行し、当事者らの社会的意識を検証する。本研究は初年度には外国人住民を中心にした活動を展開した。外国人保護者らの意識を高めるための講演会を開き、そこで議論された内容を分析した。また外国人保護者らが活動の主動的役割を担うために、地域住民同士(外国籍・日本国政)のネットワークに重点を置いた。これらの実践を通して得た知見は次の3点である。(1)外国人保護者同士の連携が弱く、彼ららが抱える共通の教育問題及び解決策は共有されていない。その背景には異なる教育制度(公立学校か外国人学校)を選んだ保護者らが同地域に住み、教育は彼らの共通課題と見なさない傾向がある。(2)保護者らが持つ社会的ネットワークは外国人コミュニティーに限られていて、現地の地域社会とのつながりは希薄である。その結果、日本人保護者間で共有する学校教育の情報を外国人保護者らは得られにくい。(3)多くの外国人保護者らは子どもの教育に将来をかける。しかし日本における外国籍児童生徒の教育制度をよく把握しておらず、子どもの進路に悩む。外国人保護者と公立学校との連携が不十分である場合、保護者らは学校とこの相談をしようとしない。また地域内の学校では外国人児童生徒の進路指導に熱心に取り込む教諭とそうでない場合とで、指導の温度差がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究初年度に企画した学習活動を地域コーディネーター及び教育支援者らが実践し、ブラジル人保護者及び日本人住民の何人かの参画を得た。初期段階のネットワーク作りが出来上がり、今後の学習活動はこれらのネットワークをもとに展開していく。また地域コーディネーターの役割を強化するために会合を重ね、参加者の理解を得た。全体的に研究の進捗状況は概ね順調であると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度でも実施した講演会を、次年度にも実施する予定である。海外で実践されている地域連携活動を掛川市大東地域の住民(日本人・外国人)に紹介し、国籍を問わない地域内連携を促す仕掛けとする。今までは日本人・外国人が同じ地域に居住していても、地域における問題は両者の共通問題だと認識されてこなかった。両者との接点を探りながら地域内のネットワークづくりへの支援を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度以降に研究・学習活動を継続すると同時に情報提供を行う。本成人学習で提供する情報は、在日ブラジル人が生活設計時の判断材料として利用できる情報である。保護者らが求める情報を彼らが生活する「空間」で提供する。本研究でいう「空間」とは、外国人保護者らが集う教会、外国人学校、NPO団体等である。この活動を、NPO団体、在掛川ブラジル人コミュニティーと共同で行う。本企画の広報活動を行政機関の協力を得て行う。その他、本研究は他国で異文化及び多様性との共存を目指す活動を実施する団体と意見交換を行う目的で、実績のあるInstitute of Community Cohesion(Coventry, UK)の研究者と日本でワークショップを企画する。本研究は、調査対象者を単なる情報提供者として見なすのではなく、研究・実践活動に欠かせない役割を担う人物とする。実施する諸活動は、現地コーディネーター、教育支援者及び保護者らが協働で「学習の内容」を練り上げる。これらの相互作用の産物は本研究のデータであり、研究の方向性と評価を示す指標でもある。また研究者らは収集したデータを逐一に分析し、その結果を保護者らへ還元する。
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Research Products
(1 results)