2013 Fiscal Year Research-status Report
少子高齢・人口減少社会における高齢者の投票行動に関する社会老年学的研究
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23653124
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
小田 利勝 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 名誉教授 (90124536)
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Keywords | 投票行動 / 老年学 / 世代間対立 / 世代間公平性 / 若年世代 / 高齢世代 / 少子高齢・人口減少社会 / 政治的関心 |
Research Abstract |
この年度には、前年度に収集したデータを分析した。以下は、その成果の一部である。世代間対立や世代間競争、世代間闘争といった幾分かはセンセーショナルな表現で社会保障をはじめとする諸政策の受益と負担の問題が議論されているが、若年世代と高齢世代が実際に対立的な態度を持っているか否かといった問いに明確な答が用意されているわけではない。こうした問題は老年学にとっても重要な課題として欧米では早くから関心を集めてきたが、日本の老年学においては真正面から取り上がられることがなかった。年金や介護・医療などの社会保障制度は、世代によって受益側と負担側とを区分し、両世代が合意の上で結ぶ世代間契約として成り立っているから、本来は両世代が不公平や不利益、優遇感を覚えないはずである。世代間対立というのは、そうした合意が崩れて世代間契約が破綻している状況にあることを意味する。こうした状況の下で、世代間対立を各種政策の予算配分に対する態度の観点から操作的に定義すると、各世代は自世代の利益に直結する政策のための予算を増額すべきだとする意見を持ち、他世代の利益に直結する政策のための予算を削減すべきだとする意見を持つということになる。3つのタイプに分類した政策予算に対する態度を多元配置分散分析によって分析した結果、若年世代向け教育関係予算、若年世代向け就労関係予算、高齢世代向け予算のそれぞれに対する態度には世代が単独で強い影響を与えているということはないことが明らかになった。年齢で一括りされた若年世代や高齢世代という集団それ自体が相互に対立的と言えるほど自世代利益志向的な態度を持っているわけではないということである。そして、所得や経済的ゆとり感、学歴と行った社会経済的変数が相互に関連しあいながら予算の増減に対する態度に影響を与えていたことは、世代内対立の問題をより考慮すべきことを示唆していると言えよう。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
多くの質問項目からなる調査票を用いた調査であったために、分析に用いることができる変数も多く、高齢者の投票行動や選挙への関心などを多面的に分析が可能であり、現在も分析を進めている。その過程で、個別テーマごとに研究成果をまとめ、発表している。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画期間内に収集した諸資料や調査データは今後も引き続き分析が可能であり、高齢者の投票行動に関する社会老年学的研究の新たな知見を数多く得られることを確信している。そして、それらの知見は、少子高齢・人口減少社会におけるこれまで議論されたことのない様々な課題を提起することになり、新たな研究領域の開拓にもつながると期待している。そのためにも、さらに調査対象を広げて研究を推進していく所存である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
無作為で抽出された成人男女3,000人を対象にした調査を実施したが、調査票の発送費用を郵便から宅配メールにしたことで経費が削減できたことと、当初予定していた回収率よりも若干低い結果となったことにより返信料が当初予定よりも低額になったことと、そして、回収率に関わりデータ入力に関わる費用も当初予定よりも低額になったことによる。 調査で約1,500票の貴重なデータの分析を順次進めてきたが、600を超える変数の解析の過程で更に分析を進める価値のある課題が幾つも浮上してきたため。 次年度において、上記の未使用額をそれらの分析と結果のとりまとめに関わる費用や学会の大会での報告のための旅費、論文投稿料に当てることとする。
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