2012 Fiscal Year Research-status Report
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23653138
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Research Institution | Kyoto Gakuen University |
Principal Investigator |
川田 耕 京都学園大学, 経済学部, 准教授 (50298676)
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Keywords | 近世中国の社会 / 近世中国の文化 / 愛情の歴史 / 中国の演劇 / 中国の民話 |
Research Abstract |
当初申請した「研究計画・方法」における「平成24年度の研究計画」に記した通り、「中国の長い近世における愛情の歴史を中心に研究」をすすめた。とくに前年度に収集した演劇関係の文献を読解するとともに、新たに中国各地で採取された口承民話を記録した文献を収集し、読解をすすめた。そうした作業のなかで、『隠された国家』などで示した日本における愛情の歴史や『愛の歴史』で示した現代中国・香港における愛情の歴史との比較史的な見通しがある程度みえてくるとともに、次第に当初の研究の目的である「中国における愛情の歴史」の大きな流れがみえてきたように思われる。とくに、『白蛇伝』などの四大伝説と総称されるものを初めとする民間の口承説話・演劇のなかには、近世さらに近代にまでおよぶ中国の人々の心性の豊かな表現がみられ、それらにかかわる文献を踏査し、その一環として香港において演劇・口承説話の文献・上演の調査も行った。 同時に、今年度後半以降には、文献の読解の段階を脱して、具体的な研究発表・論文執筆の準備にも入った。一つは中心は『白蛇伝』の内容の変遷と社会的状況の変化を対応させながら、愛情をめぐる民衆の心性を浮かび上がらせるという趣旨のものである。もう一つの中心は、『しらくもの頭の皇帝』『十人兄弟』などの民間伝承のなかに、国家的秩序と異性愛とをめぐる民衆の想像力を読み取ろうという趣旨のものである。この二つの角度からなる研究は相互に連関するもので、あわせて、「中国における愛情の歴史」の重要な部分を示すことができることを期待している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
文献の踏査・読解はほぼ予定通り行うことができた。また、研究発表・論文執筆もおおむね順調にすすめているところである。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、過去2年間の調査・研究を発展的に継続しながら、同時に、そのなかでみえてきた研究の成果を、上の「研究実績の概要」に記した通りの具体的な形にして発表し、各論における研究史上の進歩を確かなものにするとともに、そのことによって、「中国における愛情の歴史」についての一つの全体的で仮説的なパースペクティヴを示したい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
申請時に記した「研究計画・方法」における「3・平成24年度以降の研究計画」ならびに「研究計画調書」に記した計画に則って、おおむね予定通りの行う予定である。ただし、書籍の購入費が郵送代も含めて予定以上に多くなるため、「人件費・謝金」にかんしては独力で行う部分を増やしその支出はおさえて、その分を「物品費」「その他」の経費として使用する予定である。
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