2012 Fiscal Year Research-status Report
多言語DAISYテキストに基づく「外国人児童学習支援」に向けたアクションリサーチ
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23653140
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
小澤 亘 立命館大学, 産業社会学部, 教授 (30268148)
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Keywords | 外国人児童の学習支援 / 多言語DAISYテキスト / 多文化共生社会 / アクションリサーチ / 国際情報交流 / ブラジル / フィリピン / インドネシア |
Research Abstract |
湖南市石部南小学校における外国人学習支援では、引き続き、iPadおよびタッチパネルPCによるDAISY版教科書および漢字練習アプリを利用した有意義な学習支援の形態を模索した。また、高学年生を対象として、日本の童話を生徒自身の創作挿絵と声とでDAISY絵本を作成するワークショップも行うなどして、DAISYの教育への新たな応用も工夫した。小学生にとって、魅力的なDAISY版図書を制作するという目的から、詩人・童話作家である野呂昶氏の作品(仏典童話1点、湖南市の歴史説明文2点)を日本語とポウロガル語およびスペイン語翻訳を併記した多言語DAISY図書化を行い、当校において開催された滋賀県教育研修会にてパネル展示した。 インドネシア人児童の学習支援に関しては、インドネシア留学生協会の協力を得て京阪神に在住する100名のインドネシア人に対する意識調査を実施し、当事者による支援システムの継続化に向けた可能性を模索した。また、研究協力者によるインドネシアの現地調査も実施した。また、ブラジルのサンパウロ市のカエルプロジェクトについては、調査協力者によるインタビュー調査を実施し、現状の把握に努めた。 京都市および京都市教育委員会の後援を得て、京都市内の小学生を対象として、DAISY絵本作成ワークショップを2回(2012年8月23日、2013年3月26日)実施した。2013年3月24日には、DAISY公開シンポジウムを実施し、今までの成果を報告するとともに、DAISYの可能性について、前DAISYコンソーシアム会長河村宏氏、奈良県の特別支援教室担当者芳倉優富子氏とパネル討論を実施した。現在まで制作してきたDAISY図書を国内外に公開し、共有化する目的で、茨城大学KISSELプロジェクトの協力を得て、DAISY教育教材共有化サイトを構築し始めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、研究会に、DAISYコンソーシアム前会長河村宏氏、岸政彦龍谷大学准教授、NOP「子育ては親育て みのりのもり劇場」代表伊豆田千加氏、藤山一郎和歌山大学准教授、リリアン・テルミ・ハタノ近畿大学准教授、NPO「リテラコヤ新潟」代表佐々木香織氏、内田 晴子京都文教大学非常勤講師・京都市適応指導員、彦根市国際交流員平田エジナ氏をゲストとして迎え、先端的な知見を得るとともに、ネットワーク形成を図った。 また、朝日新聞への投書、国際・国内学会での報告、DAISY図書の共有化サイトの構築など、広く社会に対する問題提起や連携へのアクションも行った。 しかしながら、ブラジル系学校や支援団体との連携については、相手側の置かれた状況が不安定にあるということから、必ずしも、当初の狙いのようにDAISYを活用する体制を作り上げられていない。この点が、今後の課題となる。
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Strategy for Future Research Activity |
湖南市石部南小学校においては、DAISY版教科書を、特別支援学級を含む学校全体のなかで活用するなかで、外国人生徒の学習支援を充実させていくという支援のモデルを完成させていく。こうした成果を湖南市に全体に普及させていくアクションリサーチの実施をめざす。 7月から9月にかけて、海外における学校教育のITC化の現状を把握するために、カナダ、韓国の現状を調査するとともに、ブラジルにおいては、カエルプロジェクトの現地調査を実施する。その後、関連支援団体との連携を目指して、研究会等を開催する。 京都市においては、近年、急激に増加しつつある日系フィリピン人児童の学習支援に対して、京都市教育委員会、日野小学校、春日丘中学校、「フィリピン系の子どもたちと学ぶ会」、フィリピン系ボランティア団体「pag-asa」と連携して、DAISY版教科書を利用していく方途を模索する。 茨城大学KISSELと連携して、制作したDAISY図書を国内外に公開するインターネットサイトを構築し、こうしたサイトを結節点として、多言語DAISY図書を共同制作していくネットワークの立ち上げを目指す。本研究の成果を世に問うとともに、今後の課題を明らかにするために、公開シンポジウムを実施する他、国内外の学会において、成果報告ならびに問題提起を行っていく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
パソコン等新たな機器購入(DellnotePC 7万円×1台、高性能ヘッドホンマイク1万円×1台、iPad×5台)については、28万円、DAISY作成ソフト(ドルフィン・パブリッシャー×1セット)については、7万円を予定している。 また、多言語DAISYテキスト作成費用として、アルバイト費用および翻訳費用を25万円の支出を予定している。 成果報告のためのシンポジウム開催費用として、13万円(講師謝礼 3万円×2人、旅費7万円)を予定している他、旅費(フィールドワーク+打ち合わせ)として17万円を予定している。
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