2011 Fiscal Year Research-status Report
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23653161
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Research Institution | Kinjo Gakuin University |
Principal Investigator |
朝倉 美江 金城学院大学, 現代文化学部, 教授 (00310269)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 多文化共生 / トランスナショナルな移住 / 家族戦略 / ブラジル |
Research Abstract |
2011年度は初年度であり、研究仮説のキーワードである「トランスナショナルな移住」に関する文献の収集と「家族戦略」についての先行研究のレビューを行い、理論研究を進め、仮説に基づく調査項目を作成した。 またブラジル調査のためにブラジルの地域研究やブラジルの社会保障、福祉に関する文献、さらにブラジルの移民史について文献研究を行った。 予定していた調査については、日本の日系ブラジル人集住地域の一つである美濃加茂市を中心にブラジル友の会と共同で岐阜県外国人生活実態調査を実施した。事例調査については、統計調査の結果を踏まえ、2008年以降失業等大きな影響を受けた日系ブラジル人に対し、その生活史を含む生活実態調査を行った。 また、次年度以降のブラジル調査の予備調査として、ブラジルのサンパウロにある日系ブラジル人集住地域に行った。そこでは、ブラジルでの移民支援組織であるブラジル日本文化協会、サンパウロ日伯援護協会へのヒアリングと日本からの帰国者への事例調査を行った。なかでもブラジル日本文化協会、サンパウロ日伯援護協会と日系ブラジル都道府県人会連合会とで設立したCIATE(国外就労者情報援護センター)とNIATRE(帰国者支援センター)の支援内容について調査を行った。 ブラジルでの調査によって、ブラジルにおける日系移民社会の実態とともにそこにおける日本にデカセギに出た人々の位置づけ、さらに日本から帰国した日系ブラジル人の生活実態やその支援の概要について明らかにできた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究は、グローバル化のもと国境を越えて移動する移民に焦点をあて、移民の生活実態とその支援方法を明らかにすることを当初の目的として設定している。そのためには日本で生活している日系ブラジル人とブラジルに帰国した日系ブラジル人双方の生活実態を明らかにすることが最も重要な課題であった。 当初の計画では2011年度は日本における日系ブラジル人の生活実態を明らかにすることに重点をおき、ブラジル調査については2012年度に詳細な事例調査を行う予定で、移民支援機関とのネットワークを構築することが重要課題であった。 2011年にサンパウロに行き、支援機関との連携や研究協力も十分得ることができ、ブラジルにおける日系人組織の現状についてその概要を明らかにすることができた。そこでは日系移民の先駆者である日系1世が移住生活が安定してきたころから積極的に相互扶助組織を形成し、多様な支援活動を行っていることがわかった。さらに予定していた以上に日本から帰国した日系ブラジル人の方々へのヒアリング調査を行うことができた。 なかでも日系企業の協力を受けることができたので、日本から帰国した9人の日系ブラジル人を対象に調査を行うことができた。その成果については「移住労働者の実態と支援の展望―コミュニティ・ユニオン調査とブラジルへ帰国した日系人の実態調査を踏まえて」(『コミュニティ・ユニオンの役割と課題に関する実証的研究報告書』 2012年3月)という論文にまとめた。
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Strategy for Future Research Activity |
2011年の調査では、日本とブラジルの国境を行ったり、来たりするトランスナショナルな移住は、ブラジルの日系社会のなかでは大きな社会問題となっており、ブラジルの日系社会の空洞化とともに帰国者の貧困や子どもの不就学や再適応の難しさなどは深刻な状況にあることが理解できた。したがって、その問題を解決するための専門的な支援内容について調査を行いたいと考えている。 そして2012年度は2011年度のブラジルでの予備調査を踏まえて、日本からブラジルに帰国した日系ブラジル人の生活史調査を実施する。その際帰国した日系ブラジル人がどのような経緯で帰国に至り、現在どのようにブラジルで生活を行っているのか。その際の再適応の問題について詳細に調査を行いたい。そのうえで再適応に必要とされる支援内容について明らかにしたいと考えている。 また2011年はブラジルのサンパウロで調査を行ったので、今年度はリオデジャネイロの日系人が多い地域でも事例調査を丁寧に行いたい。その際に「家族戦略」が具体的にどのように展開されたのか。その成果と課題を具体的に明らかにしたいと考えている。なかでも再適応が「家族戦略」によってどのように行われたのかを明らかにしたい。そして「家族戦略」では乗り越えられない課題を専門的支援によってどのように解決できるのかを検討したい。 そのうえで、サンパウロとリオデジャネイロの地域性の比較も視野に入れて調査を行い、その結果の分析を行っていきたいと考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
サンパウロについては昨年、日系ブラジル移民の支援組織・機関との協力関係を構築することができたので、今年度はリオデジャネイロの支援機関・団体等との協力関係をつくりながら調査を成功させたいと考えている。 したがって、今年度の調査は日本とリオデジャネイロを行ったり、来たりしながら日系ブラジル人支援を行っている日系ブラジル人の渡辺エミリア氏と一緒に調査を行っていきたいと考えている。 したがって研究費の大半はブラジルのサンパウロとリオデジャネイロへの2人分の交通費・滞在費として活用する。そして渡辺エミリア氏の調査協力(ポルトガル語の翻訳と通訳を含む)に対する謝礼と調査に関しての調査協力者への謝金の費用として使用したいと考えている。
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