2012 Fiscal Year Research-status Report
「人を罰する動機」の規定要因と影響に関する法心理学的研究
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23653170
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
唐沢 穣 名古屋大学, 環境学研究科, 教授 (90261031)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤田 政博 関西大学, 社会学部, 准教授 (60377140)
日置 孝一 神戸大学, 経営学研究科, 講師 (60509850)
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Keywords | 法と心理学 / 意図性認知 / 懲罰動機 / 道徳性認知 / 過程分離手続き |
Research Abstract |
1.判例プロジェクトでは、刑事裁判における判決文に現れる懲罰根拠の分析を継続して行った。さらに、民事裁判の事案において、賠償額の調整などに含まれる懲罰的な意味合いに関する分析を行った。 2.刑事事件プロジェクトでは、前年度に引き続き量刑判断に及ぼす人物道徳性の効果、および応報的動機と功利主義的動機の媒介効果を比較するための実験研究を行った。そこでは、非道徳性に関する応報的義憤(moral outrage)の一貫した媒介効果が明らかになった。 3.人物道徳性の効果を規定する自動的過程と統制的過程を区別するために、過程分離手続きを用いた実験題材の作成と試行的実験を行った。まず、道徳的基盤に関する多数の特性語に対する判断を測定するための予備調査を行い、その結果をもとに開発した題材を用いた実験を行った。再認課題等に変更を加える必要性が明らかとなり、その改訂を行った。 4.民事事件プロジェクトでは、損賠賠償判断に及ぼす行為の意図性の効果と、法人等の集合体が行為者である場合の賠償判断に影響する要因について検討するための実験題材を作成し、試行的実験を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
判例プロジェクトの進捗により、当研究が考察対象とする問題領域の特定と理論的枠組みの構造化が順調に進められている。 行動実験の精度を向上させるための様々な取り組みを行い、実証データが蓄積されている。特に懲罰動機の基礎となる媒介過程については、より精緻な理解を可能にするデータが収集されている。自動的・統制的過程を分離するための実験題材の開発も進んでいる。また、刑事だけでなく民事分野にも題材を取った実験デザインを構築する作業も順調に進展している。 以上の研究成果を国内外の学会等で発表する作業も順調である。
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Strategy for Future Research Activity |
過程分離手続きを用いた、自動的・統制的過程の同定を行動実験によって確立することが喫緊の課題である。それに引き続き、事象関連電位をはじめとする脳神経科学的知見を得ることも緊急の課題と言える。 最終年度には、刑事領域だけでなく民事領域における懲罰的動機の効果についても実証的検討を加える。その際、大学生サンプルだけでなく一般サンプルを対象としたデータ収集を行い、知見の一般化を図る。 成果の公表をさらに進めるため、学会におけるシンポジウム等の企画を積極的に行っていく。海外の研究者との共同研究、さらには成果公表のための国際シンポジウム開催の企画について、それぞれの具体化に向けて一層の努力を続ける。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
・大学生以外の一般サンブルからデータ収集を行うため、オンライン実験の実施を業者に委託する。 ・研究補助者の雇用を行う。 ・国際共同研究を推進するため海外出張費用を支出する。 ・成果公表のための国際会議出席費用を支出する。
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Research Products
(6 results)