2011 Fiscal Year Research-status Report
トワイライトホープレスの孤独死の改善を目指したアクションリサーチ
Project/Area Number |
23653173
|
Research Institution | Nara Medical University |
Principal Investigator |
堀江 尚子 奈良県立医科大学, 医学部, 講師 (50598943)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
葛西 リサ 大阪市立大学, 公私立大学の部局等, 研究員 (60452504)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
Keywords | 孤独死 / トワイライトホープレス / 支援関係 / 居住 / 施設 / 貧困 / 居場所 / 独居高齢 |
Research Abstract |
本研究は、貧困層を受け入れる社会福祉施設の中で積極的なアフターケアを実践する施設への訪問調査ならびに施設退所者へのインタビュー調査を実施し、その知見を基盤としてトワイライトホープレスの孤独死の防止機能を有する場を創設するアクションリサーチである。研究は三段階から構成されている。第一段階は基礎調査、第二段階は社会実験、第三段階は研究の公表と評価を行う3年間を要する計画である。平成23年度は、第一段階の基礎調査を実施した。貧困独居高齢者の孤独死防止策の検討するにあたり今年度の調査は、住生活に問題を持つ貧困高齢者を多く受け入れる更生施設の支援の実践及び、家庭訪問による施設退所者の生活実態を中心に聞き取りを実施した。施設調査はトワイライトホープレスを受け入れる中間施設ある全国の更生施設を訪問し、施設職員に対してインタビューを実施した。調査協力が得られた対象の更生施設は19か所であり、都道府県別では東京都9か所、神奈川県3か所、愛知県3か所、大阪府2か所、京都府1か所、兵庫県1か所であった。施設退所者へのインタビュー調査では25人の人を対象に家庭訪問をしたうえで聞き取りを行った。その結果、多様な問題を有しつつ地域で生活する施設退所者は増加傾向にあること、退所後のアフターケアに積極的に取り組む施設ほど退所者の孤独死を把握していること、また当事者の住要求の低さが住まいの貧困をより助長している点が明らかとなった。この調査結果は平成23年2月の関西社会福祉学会において「ソーシャル・キャピタルとしての生活保護施設 その1-更生施設全国調査からの一考察-(発表者;堀江)」、「ソーシャル・キャピタルとしての生活保護施設 その2 -A更生施設からみる退所者の住生活実態-(発表者;葛西)」として報告を行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は実態調査が研究の骨子であったが、その調査が計画に従い順調に実施できたのは、実践現場の協力者の助力によるものであり、その助力を得ることができた主要な要因は、研究者のこれまでの活動によって構築した人々との関係に寄与していると考えられる。ここでいう協力者とは、支援の活動を職業とする人、ボランティアでかかわる人、支援される当事者が含まれる。これまで研究代表者(堀江尚子)は、ホームレス支援団体調査の一環として、男性の中間施設の調査を行ってきた。一方、研究分担者(葛西リサ)は、DV被害者研究の一環として、女性の中間施設の調査を行ってきた。また両名は過去に全国の更生施設、救護施設などの生活保護施設の職員で組織される全国更宿連絡協議会の年次大会に数度に渡り参加し、現場の人々との対話を重ね、問題を多角的に検討するための人的ネットワークを構築してきた。この全国更宿連協議会の会長であり全国的な問題とその動向を把握している立場にある奥村氏からは、今年度のアフターケアを実施している中間施設への訪問調査の実現に大きな支援を賜った。日常的に入所型施設の業務は多忙であり、訪問調査の趣旨の理解は得られても、実際にその時間を設定するには何度もやり取りが必要であったが、それぞれの調査先では前向きな対応を頂いた。訪問調査の場面では、面識のある方もおられ、率直な意見を聞くことができた。また当事者への聞き取り調査は、特に研究代表者と研究分担者が当事者の利用するアフターケアに関与してきた実績によるものといえる。基礎調査のための施設への訪問調査と当事者の自宅への家庭訪問調査は、多様な施設の実態と当事者の抱える問題を総合的に把握することであり、それと同時に本研究チームの蓄積された知の応用可能性を検討する過程でもあった。この研究が順調に実施できているのは、実践現場の協力者との信頼関係に基ずくものと考えられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成24年度は研究第二段階の社会実験、平成25年度は研究第三段階の研究公表と評価を実施する予定である。 第二段階では、孤独死の予防機能を有するトワイライトホープレスための実験的な場を、多様な協力者との協働的実践のもとに創設する。その場は、トワイライトホープレスの分析された特性に適応するように設計された場所を提供する。その場所は活動において複数の選択枝が提供されているものの総体として存在するものを想定している。場所とのかかわりが孤独死を防止する機能が作動する場を実験的に創設する。その場ならびに本研究チームの事務拠点として、大阪市立大学都市研究プラザが所有する現場プラザの一つである天神橋プラザを活用する。天神橋プラザは、約30人収容可能なスペースでもあり、実験的な場を創造するにあたり適切な大きさのスペースである。 平成25年度は実験的な場に装備された孤独死の防止機能の評価および研究全体の総括のために、調査協力団体への報告会と学術的なシンポジウムを開催する予定である。報告会は調査協力団体へのフォードバックが主な目的であり、全国更宿連絡協議会で報告検討会を開催する。一方で報告会は、広く一般市民も聴衆としたものも企画する。関係機関との協賛によりフォーラムやシンポジウムを開催し広く一般市民の参加を喚起し、研究の社会的意義を問う。学術的な意義を検討するためのシンポジウムは、学際的分野から指定討論者を招聘したものを開催する。居住不安定者の実態に詳しい二名の学識者を中心に研究成果としての知見の議論を行う。一名は地理学研究者の水内俊雄教授で、もう一名は社会福祉学研究者の中山徹教授である。両者からの意見を踏まえて、研究成果である学術的知見の再構築ならびに精緻化をおこなう。本研究は継続的な研究の必要性が予見されるものであり、以上の総括を行うことによって、それ以降の研究継続に備える。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度は、平成23年度の未使用額を含め直接経費は800,000円を使用予定である。内訳は物品費200,000円、旅費400,000円、人件費・謝金200,000円を計画している。
|
Research Products
(2 results)