2011 Fiscal Year Research-status Report
「莫高窟」を発掘する-オンラインコミュニティで「社会知」は醸成されたか
Project/Area Number |
23653177
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
三浦 麻子 関西学院大学, 文学部, 教授 (30273569)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森尾 博昭 関西大学, 総合情報学部, 教授 (80361559)
折田 明子 慶應義塾大学, 政策・メディア研究科, 特任講師 (20338239)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | オンライン・コミュニティ / 電子掲示板 / アーカイバルデータ / 名乗り / 社会的距離 |
Research Abstract |
まず,全プロジェクトに共通して使用する電子掲示板への投稿ログのアーカイバルデータを適切に分析できる形に加工するために,研究補助者の協力を得て,ニフティサーブ「フォーラム」のバックアップログデータから該当するデータの切り出しを行った.さらに,切り出されたログデータの精査と問題点の洗い出しを経て,分析可能な形のデータに加工した.加工したデータを用いて,以下の3つの観点から分析を行った.オンライン・コミュニティで生じる「ダイナミズム」に関する分析・考察では,「心理学フォーラム」を対象としてログデータを精査し,平成9年1月17日(阪神大震災当日)から3ヶ月間の投稿を抽出して内容分析を行った.震災直後の1ヶ月程度は安否確認・被災地状況報告が多くなされているが,その後はほとんど平常に復していたことが分かった.利用者の「ネット上の名前」に関しては,災害時の情報交換が行われやすい場所として「家庭と子育て」フォーラムのうち地域情報に関する6つの会議室を対象として,投稿者の名乗りに関する分析を行った.若干の地域差は見られるものの実名で投稿するケースはほとんどなく,その傾向はアクティブ利用者においても同様であることが分かった.利用者間の「社会的距離」に関しては,「パナソニックフォーラム」を対象として,利用者間の相互作用の特徴を明らかにするための予備的分析を行った.投稿回数と投稿者数の対数グラフに線形関係が見いだされ,社会的インパクト理論にもとづく解釈可能性が示された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初は必要なスキルを持つ研究補助者を確保することに時間がかかったが,確保後の連携は予想以上に効率的に行うことができ,データ加工を円滑に進められた.
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度に得られた結果を基にしてさらに発展的な分析を行い,オンライン・コミュニケーションにおいて,利用者たちが,どのように,どのような「社会知」を醸成してきたか/今後できうるかを明らかにする.「ダイナミズム」研究では,利用者個人のコミュニケーション行動に加えて,活性化にともなう話題の推移に注目した分析をおこなう.アーカイバルデータおよび比較対象データの中から,活性化が著しいとみなしうる場面を抽出し,そうでない場面と比較して話題の拡散や深化の程度にどのような差があるのかをテキストマイニングにより分析する.社会知の形成過程においてコミュニケーションが活性化する際のダイナミズムを検討し,モデル化をおこなう.「名乗り」研究では,投稿者の名乗りとIDが,投稿内容および議論の質,また他の情報の評価においてどのような影響を及ぼしているのかを検討する.さらに,ダイナミズム研究で得られた知見と名乗りの関係,社会的距離と名乗りの関係についても検討する.「社会的距離」研究では,参加者間の人間関係の表現である社会的距離構造が,他のプロジェクトによって抽出された,議論の質やそこに含まれる匿名性に対してどのような関係性を持つのかを調べることによって,オンラインにおける社会知の形成に人間関係がどのような役割を果たすのかを検討する.これらの3研究で得られた結果をとりまとめ,研究代表者と研究分担者たちがこれまでに自ら行った研究をはじめとして,従来のCMC研究で得られた知見との比較検討も含めて,成果の発表を行う.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
昨年度は,確保した研究補助者が非常に優秀で,データ加工作業を迅速に進められたので,報酬を予定よりかなり低く抑えることができた.また,共同研究者との情報共有のオンライン化を進めたことによって,共同研究者の出張旅費についても低く抑えることができた.そのため相当額の繰越金が発生することとなった.これらの繰越金については,今後のデータ分析補助や,今後追加可能なアーカイバルデータの加工処理に対する謝金など,研究対象とするデータの質と量を当初の予定よりも充実させるために執行する予定である.それ以外の資金計画については,当初予定と特に変更はない.
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Research Products
(1 results)