2011 Fiscal Year Research-status Report
自閉症の異文化比較:母親質問への子どもの応答とナラティブ発達の関連から
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23653184
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
大井 学 金沢大学, 学校教育系, 教授 (70116911)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 自閉症 / 多言語 / 多文化 |
Research Abstract |
研究1 台湾のHFASD 児は疑問詞質問とともにはい・いいえ質問に定型発達児より十分でない応答が多かった。A-not-A質問(例 餅乾會不會開?応答は會または不會でよい)と選択質問では両群に差がなかった。日本と同じく台湾でもHFASD児は疑問詞質問応答が苦手で、これは言語の違いを超えている。台湾でY/N質問応答が困難だったのは、回答者がyesと答えることを質問者があまり想定していないという語用論の影響が考えられる。A-not-A質問や、選択質問(日本語では母親質問の1%程度)は日英のはい・いいえ質問と類似の機能があり、HFASD児には容易であったと考えられる。Y/N質問は、蓋然性の低い事象についての判断要請を求められるため、事実に忠実な正確な応答を志向するHFASD児を困惑させたかもしれない。疑問詞質問への応答困難がASDで日英台3か国語にまたがる、その背景は自閉症の病理の本質に迫る糸口として探索する価値がある。研究2 日中英トリリンガル高機能自閉症幼児をもつ多言語家族内のコミュニケーションダイナミクスを、3か国語話者である母親によるコードスイッチングに焦点を当てて検討した。スイッチのタイプは(1)言語教育目的、(2)会話参加者の共通言語への切り替え、(3)母親における言語の優位性、(4)言語間の複雑さのマネジメント、(5)各言語に固有な言語使用の習慣、(6)他の言語では表せない当該言語独自の伝達の遂行(7)子供の聞き手としての注意を引くに区分された。これに対する子供が自閉症であることの影響の検討を会話分析で行った。国際的にまれな研究となる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
日台では親子会話縦断研究が順調に推移し、着実にデータを得た。解析を待つばかりである。その初年度分は国際学会で発表し、国際誌に投稿準備中である。英語では連合王国との打ち合わせが進展し、言語類型の違いをよく表す聞き手・話し手責任問題と間接表現のデータを24年に取る準備ができた。
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Strategy for Future Research Activity |
1)親子会話の横断データを日台で比較照合する作業を促進する。言語の違いが質問応答に及ぼす影響、子どものナラティブ、親子会話スタイルのインタラクションを検討するパラメターを確定する。2)連合王国での自閉症会話データを日英共同で分析する体制を構築する。3)日中英トリリンガル家族コミュニケーションの定量的分析パラメターを確定する。4)間接要求と子どもの応答の適切性の言語比較を研究課題として追加する。なお、次年度に使用する予定の研究費が生じたのは、連合王国における研究の打ち合わせの手続きを研究倫理の面で慎重確実にすすめたためである。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
1)台湾での縦断データTime2の収集と解析をすすめる。このため台湾を1回訪問し、共同研究者と作業する。2)連合王国を1回訪問しTime1データ収集の環境設定を行い、実施する。3)3国ごとに会話記録を文字転写し、共通コーディングシステムでコード化する4)セカンドコーダーは、研究目的を知らない大学院生を割り当てる。このために謝金を支出する。なお、次年度に使用する予定の研究費は、連合王国での滞在期間の延長にあてる。
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Research Products
(1 results)