2011 Fiscal Year Research-status Report
擬態語による性格記述に関連する個人的・社会的要因の検討
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23653194
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Research Institution | Kyoto Notre Dame University |
Principal Investigator |
向山 泰代 京都ノートルダム女子大学, 心理学部, 教授 (80319475)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
酒井 恵子 大阪工業大学, 工学部, 准教授 (50306370)
小松 孝至 大阪教育大学, 教育学部, 准教授 (60324886)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | パーソナリティ / 擬態語 / 性格尺度 / 社会的相互作用 |
Research Abstract |
本研究の目的は、擬態語による性格記述と関連する個人的要因や社会的要因を、質問紙調査・面接・実験によって明らかにし、日常的なコミュニケーションでの擬態語による性格記述の特徴と機能について考察することである。平成23年度の実績は次のとおり。 1.擬態語性格尺度に関する論文の公刊: 擬態語性格尺度の構成について論文にまとめた(小松ら, 印刷中)。擬態語性格尺度は"臆病さ""緩やかさ""几帳面さ""不機嫌さ""淡白さ""軽薄さ"の6下位尺度(各10項目)からなり、自己評定と他者評定に共通で使用できる。Big Fiveとの関連では、関連が強い特性(臆病さ・几帳面さ・不機嫌さ)と弱い特性(淡白さ・緩やかさ・軽薄さ)がある(向山ら, 2011)。自己評定と他者評定を比較すると、女子は男子に比べて自己の"几帳面さ"を低く、他者の"几帳面さ"を高く評定し、他者の"不機嫌さ"を低く評定する等、評定対象や性別による違いが見られる。 2.同性友人ペアによる性格の評定: 自己評定と他者評定の比較を目的として、同性友人ペアを対象に、新たに擬態語性格尺度による調査を実施した。 3.擬態語性格尺度と他尺度との関連: 擬態語による性格評定と関連する個人的要因として価値志向性(酒井・山口, 1998)を取り上げ、ペア評定への参加者を対象に調査を実施した。 4.性格を表現する擬態語の使用に関する調査: 擬態語による性格表現がどのような関係性や場面で使用されるのかを調べるため、大学生を対象に半構造化面接を行った。また、現職教員や教員養成課程学生を対象とした調査を実施し、役割や場面による性格記述の違いを検討した(小松, 2011)。 5.擬態語性格尺度の短縮版の作成: 教育や臨床等の実践場面での擬態語性格尺度の活用を視野に入れ、6下位尺度×5項目からなる短縮版の作成に着手した(小松ら, 2012年度発表予定)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
擬態語性格尺度の構成と並行して進めてきた自己評定・他者評定データの分析から、自己と他者による性格評定の一致の程度や両評定にみられる特徴、さらに男女の性格評定にみられる特徴についての知見を得た。これらの結果は、「調査参加者による性格の自己評定」と、「調査参加者による友人の性格の評定(調査参加者による他者評定)」という2つの評定データを分析して得られたものである。これまでに得られた親しい2者関係における性格評定についての知見をさらに深化させるため、同性の友人ペアを対象として新たに調査を実施し、先の2つの評定データに「友人による性格の自己評定」を加えた3つの評定データを収集した。既に男女大学生約200名の資料を収集済みである。 また、擬態語による性格評定と同時に価値志向性尺度を実施し、擬態語による性格評定と価値志向との関係について検討を進めている。さらに、擬態語による性格表現の使用実態を、他者との関係性や社会的文脈との関連において検討するため、大学生を対象として半構造化面接を実施し、約40名のデータを収集した。なお、擬態語性格尺度のさらなる活用を目指して、尺度構成に用いたデータをもとに、短縮版の作成も進めている。 以上は、本研究が目的とする、擬態語による性格記述と関連する個人的要因と社会的要因を多様な研究手法を用いて探索し、日常的なコミュニケーションにおける擬態語による性格記述の特徴と機能を明らかにするという目的に沿ったものである。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策は以下のとおりである。 1.同性友人ペアによる性格評定の分析: 収集した同性友人ペアによる擬態語性格尺度の評定データについて、同一人物の性格の自己評定結果と他者評定結果を比較し、性格評定にみられる一致・不一致を調べる。また、擬態語性格尺度の6下位尺度のうち、自己評定と他者評定、あるいは男女において評定値の差の大きい(あるいは小さい)語群や、弁別しやすい(しにくい)語群等に着目し、日常の親密な対人関係の中での擬態語による性格の記述について検討する。 2.半構造化面接で収集されたデータの分析: 半構造化面接で得られたデータを分析することで、擬態語による性格認知の過程や認知の枠組み、親密な対人関係における擬態語による性格記述の機能について検討する。 3.特徴的な個人を対象とした実験: 擬態語の性格記述に関連する個人差を検討するため、調査参加者の中から擬態語性格尺度の評定において特徴的な個人を「典型」として選出し、認知実験を実施して、課題での遂行成績と擬態語性格尺度の評定との関連を調べ、擬態語による性格記述に関係する個人要因について検討する。 4.性格擬態語の特徴と機能についての理論的考察: 本研究における調査・面接・実験での結果をもとに、擬態語による性格記述と個人的要因・社会的要因との関連、擬態語による性格表現過程の心理学的な位置づけ、日常的なコミュニケーションにおける擬態語による性格記述の特徴と機能について理論的考察を行い、これを学会発表や論文として公表する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
データ入力作業に伴う謝金、個別実験のための実験機器の購入、分析のためのソフトウェアの購入、理論的考察のために必要な図書の購入を予定している。また、学会等での研究成果の発表を予定しているため、旅費の使用を計画している。
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Research Products
(2 results)