2011 Fiscal Year Research-status Report
文化的・社会的要因がADHD傾向のある大学生の支援ニーズに及ぼす影響
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23653198
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
高橋 知音 信州大学, 教育学部, 教授 (20291388)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | ADHD / 大学生 / ソーシャルサポート / ソーシャルスキル / 国際比較 / 支援ニーズ |
Research Abstract |
大学における発達障害学生の支援は国際的に重要なテーマであり、我が国でも近年その取り組みが本格化しつつある。発達障害の中でも米国ではADHDが主要な支援対象となる一方、日本学生支援機構の報告に見られるように我が国では自閉症スペクトラム障害に関する報告が多い。申請者はこれまで、ADHD傾向自体には日米で差がないこと、日本においてはADHD傾向があっても支援を求めない場合が多いことを明らかにしてきた。今回、こうした日米間の違いの背景には、求められなくても先回りして他者を支援しようとする日本的な集団のあり方が関係しているのではないかとの仮説を立てた。本課題では、ADHD傾向と支援ニーズとの関係にソーシャル・サポートがどう関与しているかを、日本、米国、さらに第3の文化圏として中国も含めた比較を通して明らかにすることを目的とした。これまで、発達障害者への支援は認知機能との関わりで論じられることがほとんどであったが、文化的、社会的要因を考慮することの意義が実証されれば、支援のあり方にあらたな視点を加える必要性が求められるようになるはずである。平成23年度は、このような比較文化的研究がどの程度進んでいるかについて情報収集を行うために、5月にベルリン(ドイツ)で開催された国際ADHD学会において、ADHD研究の最新動向についての情報収集した。しかし、比較文化的研究についての取り組みはほとんど見られず、このテーマにおける研究はあまり進んでいないことが確認された。 続いて実証的研究に必要な、ADHD関連困り感質問紙の翻訳に取り組んだ。英語の仮訳は学会発表用に行っていたが、まだバックトランスレーションを行っていなかった。そこで、浜松医科大の染木文緒氏にバックトランスレーションを依頼した。2回にわたってディスカッションを行い、あらたな訳文を確定した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
データ収集の準備を進めるために、マカオ大学のJohn Mark Davis博士にアメリカでのデータ収集協力者を決めるべく連絡を取っていたが、当初、予定していた協力者と詳細について合意が得られなかった。そのため、米国でのデータ収集サイトがまだ確定できていない。
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Strategy for Future Research Activity |
ADHD関連ニーズ把握質問紙(岩淵・高橋, 2009)は49項目からなる4件法の自記式質問紙で7つの下位尺度から構成されている。平成24年度はまずこの質問紙の中国語版を作成する。続いて、ニーズ把握質問紙以外の測定尺度の準備をする。注意機能はIVA-CPT(視聴覚統合型・持続性遂行課題)を購入し、データ収集サイトに貸し出す。IVA-CPTはコンピュータ上で実施する、視覚刺激と聴覚刺激に対する注意持続能力と衝動抑制能力を測定することができる検査課題である。メンタルヘルスはGHQ(英語版、日本語版、中国語版)を用いる。これは精神的健康度を測定する質問紙で、それぞれの言語で標準化されている。ソーシャル・サポートの状況を調査する質問紙は、構成概念を測定する心理尺度ではなく実際の状況を記述してもらうものなので、先行研究を参考にしながら質問項目を新たに作成する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度はデータ収集先を確定すると共に、質問紙の中国語版を作成するために謝金を用いる。また、データ収集サイトが確定した段階で、IVA-CPT、それを作動させるためのノートPC、GHQの各国語版を購入する。また、アメリカにおけるADHDのある大学生に対する支援に関する最新情報を収集するために、AHEADの年次大会に参加する。当初計画では海外でのデータ収集先を確定して、打ち合わせを進める予定だったが、研究の進捗状況により次年度実施することとなったため、次年度使用額が生じた。
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