2012 Fiscal Year Annual Research Report
重症心身障害児の脳活動と自律神経系活動を応用したQOL評価の試み
Project/Area Number |
23653201
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
岩永 誠 広島大学, 総合科学研究科, 教授 (40203393)
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Keywords | 重症心身障害児 / QOL / 自律神経系活動 / 脳血流量 / 味覚 / 快ー不快 |
Research Abstract |
平成24年度は,重症児・者のケア(着替えや口腔ケア)時のQOL評価を行う計画をしていた。しかし,ケア時の体動で測定が困難であることから,味覚刺激を用いることで体を動かさずに測定できる快-不快反応の測定へ計画を変更した。対照群として,健常大学生を用いた。使用した刺激は,50%ブドウ糖水,生理食塩水、蒸留水の3種類で,0.5mlを5秒間で口腔内に注入した。重症児・者は3日間にわたり3回ずつ,健常者は1日のみ3回の刺激呈示を行った。実験参加者は,重症児・者が3名,健常者が5名であった。測定指標は,前頭葉の脳血流量をNIRS(機能的近赤外分光法)により,HRをポリグラフで測定した。NIRSについては,刺激呈示前6.5秒間の平均を基準として,その後13秒間の変化量を算出した。重症児・者の反応は日による変動があるものの,酸素化ヘモグロビン量(Oxy-Hb)がブドウ糖では低下し,生理食塩水では増加する傾向を示すパターンを示す重症児と,その逆の傾向を示す重症児がいた。一方,健常者を対象とした場合,Oxy-HbやDeOxy-Hbにさほど変化は認められなかった。HRについては,刺激呈示後に三相性の変化を示し,定位反応が生じていることが確認できた。味覚の中枢は大脳辺縁系にあり,その活動を直接NIRSで測定できないため,味覚認知の反映としての前頭葉活動を測定していることになる。健常者において,5人中4人の対象者が刺激の味覚を識別できなかったことから,味覚認知が成立していないために脳活動上の変化が観察できなかったものと考えられる。それに対して,重症児でOxy-Hbに変化が生じ,しかもブドウ糖(快)と生理食塩水(不快)とで反応が異なっていたことから,味覚を感じていただけではなく,刺激としての違いを認識できていた可能性がある。さらに事例を増やし,その確認を行う必要がある。
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