2012 Fiscal Year Annual Research Report
児童虐待への包括的地域型支援モデルの構築と療育センターの必要性
Project/Area Number |
23653203
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Research Institution | Kagawa University |
Principal Investigator |
竹森 元彦 香川大学, 教育学研究科(研究院), 教授 (50304564)
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Keywords | 児童虐待 / 児童養護施設 / 包括的地域支援モデル |
Research Abstract |
深刻な虐待の場合、親子分離をして、被虐待児を児童養護施設に入所することが一般的であるが、入所によって虐待が解決する訳ではない。児童虐待が親子関係の病理であるにも関わらず、児童養護施設には、親子関係の病理や虐待関係を治療する仕組みがなく、その結果、親の治療がなされず、児童は長期に入所せざるを得ない傾向にある。また、施設内には養護性の高い児童と被虐待児が混在している現状にある。入所児は不安定となり、入所児童同士の相互作用によって問題行動を頻発する傾向にある。施設内の児童指導員と心理療法士はその専門性の異質さゆえに機能不全に陥りやすい。以上、現在の児童養護施設や社会的養護モデルには深刻な構造的問題があり、全体として機能不全に陥りやすい。また、それらの構造のために職員のストレスは高く、メンタルヘルスの低下につながっている悪循環があると考えられる。これらの「構造的連鎖」を解消するために、地域に(施設外に)「療育センター」のような親子関係の治療を行う施設と包括的な地域型支援モデルの必要性を提案した。 本研究は、以上のような視点を明らかにするために、全国の児童養護施設へと実証的な調査研究を行った。さらに、県内の3つの児童養護施設に個別インタビューを行った。その結果、①入所時に退所に向けたおおよその見通しは持っているが、親子関係の修復や再構築にむけた具体的な進め方や十分な見通しを持っていない、②被虐待児へのケアや家庭復帰に向けての対応に限界を感じている、③保護者治療への困難さをかなり感じている、④養護児と、被虐待児を分けて対応することの重要さ、⑤里親の推進の困難さ、⑥療育センター構想の必要性、⑦職員のストレスは高さ(特に心理療法士の高さ)。以上、児童養護施設のもつ問題の構造と、それを解消するうえで療育センターを核とした包括的地域型支援モデルの必要性が示された。
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Research Products
(1 results)