2012 Fiscal Year Research-status Report
エピソード記憶の想起意識とノスタルジア感情に関する認知神経科学的解明
Project/Area Number |
23653224
|
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
川口 潤 名古屋大学, 環境学研究科, 教授 (70152931)
|
Keywords | エピソード記憶 / 自伝的記憶 / ノスタルジア / 感情 / 日常認知 / エピソード的未来思考 / 感情 / SenseCam |
Research Abstract |
本研究は,エピソード記憶がもっている,過去の記憶を再体験するかのごとく想起する機能を,ノスタルジアを喚起するような音楽・画像刺激,および本人自身が経験した日常場面刺激(視覚刺激)を用い,行動実験および脳イメージング実験によって明らかにしようとするものである. 本年度は,(1)エピソード記憶の再体験的想起とノスタルジア感の特徴およびその神経基盤,(2)エピソード想起と未来のプラン構築の関連について自己の体験がエピソード記憶の再体験的想起の重要な手がかりとなるか,という側面について検討することを目指した. (1) エピソード記憶の特徴は,単に過去の出来事を思い出すことではなく,自分自身が再体験するかのように過去の出来事を思い出すことである.そのような過去の再体験的想起にしばしば伴う感情がノスタルジア感である.これまで得たノスタルジアを喚起した場合とそうでない場合の記憶の詳細さデータの再検討を行った.また,音楽を刺激とした場合のノスタルジア喚起の背景にある神経基盤について,fMRIを用いて行ったデータに関する再分析を行った. (2)体験感を強めるために自己の体験した記憶を用いることを目指して,SenseCam(Vicon Revue社)を用いて,実際に科学館などの展示や動物園内の移動を体験するという実験を行った.そのエピソード実体験を元に未来のプランニングがどのように行われるのかを検討することが目的であった.ただ,SenseCamによる画像取得が機器の不具合があり安定しなかったため,修正を加えて検討を行った. 強いノスタルジア感は過去の体験をありありと思い出すメンタルタイムトラベルを伴うが,過去の詳細な記憶想起と他の認知判断(道徳判断)と関係する可能性が,関連研究から推測され,その研究準備を進めた.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は,エピソード記憶がもっている,過去の記憶を再体験するかのごとく想起する機能を,ノスタルジアを喚起するような音楽・画像刺激,および本人自身が経験した日常場面刺激(視覚刺激)を用い,行動実験および脳イメージング実験によって明らかにしようとするものである. 本年度は,(1)エピソード記憶の再体験的想起とノスタルジア感の特徴およびその神経基盤,(2)エピソード想起と未来のプラン構築の関連について自己の体験がエピソード記憶の再体験的想起の重要な手がかりとなるか,という側面について検討することを目指した. (1)エピソード記憶の再体験的想起の特徴とノスタルジア感の関連については,これまで得たデータの再分析を行った.その結果,ノスタルジア感とエピソード記憶の再体験感(メンタルタイムトラベル)の関連が,感覚情報,空間的位置情報,時間的情報,社会的つながり感などと関連することを再確認した.また,音楽を用いたノスタルジア喚起にともなう脳活動を測定し,そのデータの再分析を進め,論文化を準備中である. (2)自己の体験を刺激として用いる点については,SenseCamという自動的に周囲の画像を収集する装置を用いたが,その装置の故障が相次ぎ(データが保存されない,画像がぼやける),当初計画の大幅な変更を検討中である.
|
Strategy for Future Research Activity |
エピソード記憶とノスタルジア感の関連については,昨年度のデータの再分析の結果,再体験感とノスタルジア感の強い関連を再確認できた.また音楽を用いたノスタルジア喚起実験を含め,ある程度実験手法が安定してきた.ノスタルジア喚起には,詳細な過去のエピソード記憶の喚起,すなわち視覚情報も伴うが,詳細な視覚情報処理と道徳判断が大きく関係しているという記念の知見があり,このことがノスタルジア感の機能的意義を探る重要な手がかりである可能性を見いだした.次年度に向けて,の廃る時が持つこの側面について検討していく予定である. 昨年度は日本心理学会公開シンポジウムで講演を行ったが,多領域からの関心があることがわかった.その成果を論文,本にまとめる予定である.
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
SenseCamの不具合があったため,その修理を行う.また,ノスタルジアと道徳判断に関する研究として,Web調査研究および実験研究を進める予定であり,それらの実験実施のための謝金,イメージング研究実施の際の機器使用料,データ解析に関する専門的知識の提供,またそれらの結果に関する研究発表旅費等として使用する予定である.さらに海外の記憶研究者との情報交換を行い,共同研究の可能性を探る予定であり,その旅費も予定している.
|