2011 Fiscal Year Research-status Report
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23653227
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
中島 祥好 九州大学, 芸術工学研究科(研究院), 教授 (90127267)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
上田 和夫 九州大学, 芸術工学研究科(研究院), 准教授 (80254316)
竹市 博臣 独立行政法人理化学研究所, 脳数理研究チーム, 専任研究員 (60242020)
富松 江梨佳 九州大学, 芸術工学研究科(研究院), 学術研究員 (20584668)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 時間的規則性 / 事象関連電位 / 相関行列 / リズム知覚 |
Research Abstract |
時間的規則性に関して脳科学的研究を進めるに当たり、時間パターンの主観的な規則性を脳波のデータに対応付けることを試みた。すなわち、継時的に示される3つの短音からなる時間パターンに関して、既に得られている脳波(事象関連電位)のデータを再分析し、規則的であると知覚されることが多いパターンに対する脳活動と、不規則的であると知覚されることが多いパターンに対する脳活動とを、多変量解析によって分類することを試みた。その結果、19の電極における電圧変位の時間パターンから、電極間の相関行列を求め、相関行列どうしのユークリッド距離を算出することによって、数理的な意味づけのしやすい分類法が得られた。この手法により、実験参加者が判断を行わずにただ音を聴くだけの条件においても、時間的規則性が知覚されている場合のあることが示唆された。同様の数理的手法を音声の音響的分析にも用いうることを確認し、将来のリズム知覚研究に用いる目処がついた。一方では、同じ時間パターンが、規則的なものとして知覚される場合と、不規則的なものとして知覚される場合とが分かれるときに、脳活動の状態がどのように分かれてゆくのか、数理的に記述する方法を考案し、違いが次第に蓄積されてゆく様子を観測することができた。次に、視覚呈示された短い時間間隔の知覚について研究を行うために、どのような刺激を用いればよいのかについて、試行錯誤的な研究を行った。その結果、異なるランダム・ドット・パターンを継時呈示することによって、50 ミリ秒より短い時間間隔の知覚について基礎的な研究が可能であることが判った。聴覚呈示された充実時間と空虚時間との主観的時間長の比較について、既にデータが得られていたが、データを大幅に追加し、現在分析を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1) 時間的規則性に関する脳科学的研究では,事象関連電位の間で相関を取り,相関行列どうしのユークリッド距離を算出することにより,数理的な意味づけのしやすい分類法を見いだした。また知覚上の規則性および不規則性と脳波の時間的変化との対応関係を捉えることに成功した。(2) 50ミリ秒以下という極めて短い時間間隔を視覚的に呈示する方法の目途を付けた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は共同研究をより一層推進するため,研究者相互の訪問を活発化する。そのうえで,時間的規則性に関する脳科学的研究を推進するため,相関行列どうしのユークリッド距離を取る方法に加えて,自己相関を用いる方法が適用できないか,検討する。臨界帯域フィルターを通した音声のパワー変化から抽出した因子についても,それぞれの因子において自己相関を取ることを試み,言語によって特有の自己相関パターンが観察されるかどうかについて検討する。言語によって,特有の自己相関パターンが見られた場合には,さらに,脳波データに基づいた規則性および不規則性のパターンの識別と,対応関係が見られるかどうかを検討する。言語によって自己相関パターンに違いが見られなかった場合は,因子の間の時間的な関係に注目し,言語によって異なるパターンを見いだすことができないかを検討する。また,ラヴァル大学(カナダ)で実施されている,英語とフランス語のリズムの違いに関する研究にも同様の手法で参加することを検討する。音声発話時の画像データと音声とを同時記録したものを入手し,調音器官の動作タイミングと音声のパワー変化から抽出した因子との関係について,相関分析が可能かどうかを検討する。視覚呈示された短い時間間隔の知覚については,さらにデータを追加し,研究を進める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
共同研究の推進のため,旅費に重点を置く。学会発表および情報収集のために学会に参加した機会を利用して研究打ち合わせを行い,旅費の使用額を予定よりも少なくできたたため,繰越額が生じた。次年度以降,共同研究をより一層推進するために,研究打ち合わせを綿密に行う必要がある。繰越額は,この打ち合わせための旅費として使用する。研究組織構成員のうち,竹市のみが遠隔地で活動しているため,研究打ち合わせのための国内旅費として,竹市が55万円程度使用することを見込んでいる。さらに,今後とも,竹市を含む研究組織構成員が学会発表および情報収集のために学会に参加する機会も利用し,研究打ち合わせと情報交換の機会を増やす。そのための国内旅費として28万円(7万円×4名)程度を見込んでいる。残りの22万円程度は,学会参加費および研究の推進に必要な消耗品費,謝金などとして使用する予定である。
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Research Products
(25 results)