2011 Fiscal Year Research-status Report
東洋の伝統をいかした〈生の技法〉の学習と教育に関する比較研究-「食」を手始めに-
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23653245
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Research Institution | Kyoto University of Education |
Principal Investigator |
岡部 美香 京都教育大学, 教育学部, 准教授 (80294776)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 晶子 京都大学, 教育学研究科(研究院), 教授 (10231375)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 教育思想 / 東洋思想 / 歴史人類学 / 教育人間学 / 生の技法 / 国際情報交流 / 韓国:ドイツ |
Research Abstract |
まず、日本と韓国の若手研究者を中心に研究協力者を募り、共同研究のための組織を立ち上げた。共同研究組織は、研究代表者の岡部と研究分担者の鈴木のほか、池田華子(天理大学)、高橋舞(立教大学大学院)、高松みどり(大阪国際大学短期大学部)、谷村千絵(鳴門教育大学)、森岡次郎(大阪府立大学)、河兌煕(奈良女子大学大学院)、韓炫精(東京大学大学院)の9名から構成されている。岡部・森岡が日本の民俗学の先行研究を、鈴木・高松・谷村が西洋の教育人類学・文化人類学・社会学における先行研究を、高橋・韓が韓国の民俗学の先行研究を、池田・河がホリスティック教育における先行研究をまとめ、次年度の日本・韓国における調査研究とドイツとの比較研究の準備を行った。研究会ではまた、「食」のなかでもとりわけ「人の誕生と葬送に際しての「食」の作法」に注目して研究を進めることが確認された。というのも、人の誕生と葬送における作法は、共同体内部の生活にかかわるとともに共同体を超えた生命のあり様ともかかわる作法であり、目の前に(まだ・もう)いない不在の「人」に対する作法でもあるがゆえに、ここから日常の〈生きる技法〉を逆照射することができると考えられるからである。 研究成果としては、岡部が韓国・ソウルで行われた東アジア教員養成国際コンソーシアムの第6回シンポジウムで、この研究について発表した。この発表をきっかけとして、次年度の調査研究に関して、研究会メンバーの河、韓のほかに、ソウル永新初等学校で国際理解教育を担当している韓国在住の日本人・成田真美氏の協力が得られることになった。また、パフォーマンス研究・教育人類学研究で著名なベルリン自由大学のChristoph Wulf氏の思想を援用しつつ論じた著作を鈴木が発表している。なお、研究会の他のメンバーとの共同執筆論文が平成24年度に公表される予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書に記載した「研究実施計画」の平成23年度分に挙げていた4つの項目、すなわち、1)日本・韓国の若手研究者との共同研究組織の立ち上げ、2)「食」に関する東西の比較思想研究の推進、3)研究会の開催と次年度の調査研究の打ち合わせ、4)東アジア教員養成国際コンソーシアムのシンポジウムにおける発表、はすべてクリアできている。岡部と鈴木以外の共同研究組織のメンバーによる研究成果はまだ公には出ていないが、それも平成24年度には公表される予定である。ただし、調査研究の打ち合わせについてはまだ十分であるとはいえないため、次年度の夏季長期休暇までには、調査計画をより具体化していく必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度は、平成23年度に立ち上げた共同研究組織のメンバーとともに、またこのメンバーによる文献研究と比較思想研究の成果をいかしながら、「人の誕生と葬送に際しての「食」の作法」について、日本と韓国でインタビューと参与観察による調査研究を行う。これを通して、「食」に関する〈生の技法〉の学習・教育過程を具体的に解明する。 日本および韓国の調査先には複数回訪問し、かつ比較的長期間滞在し調査を実施する。経費の都合上、ドイツを複数回訪問することが難しいため、ドイツとの比較による東西比較研究に関しては、鈴木と高松がこれまで蓄積してきたWulf氏との共同研究成果をいかすとともに、Wulf氏とEメールやSkypeによるインターネット上の会議を通して密接に連絡を取り合いながら推進する計画である。 最終年度の平成25年度は、平成23~24年度に得られた研究成果を踏まえて、〈生の技法〉の体得を基軸とする東洋の伝統をいかした学習論・教育論のフレームワークを創成する。この新たなフレームワークを国内外の学会や誌上で発表するとともに、日本と韓国の研究者を招聘し、このフレームワークに関連する国際研究会を開催したいと考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究会および研究調査の打ち合わせを進めるうちに、「人の誕生と葬送」という繊細かつ神聖な儀礼に関して調査を実施するには、調査地に複数回、しかも比較的長期間滞在しながら実施する必要のあることが判明した。そこで、平成23年度の研究会を極力、Eメールによる会議とSkypeによるインターネット上での会議という形態で行うことによって、当初予定していた研究会のための旅費を、次年度の調査研究のための旅費に回すことができるようになった。これによって、平成24年度の調査研究の充実化を図りたいと考えている。 日本における調査研究は主として岡部と池田と高松が実施する予定である。韓国における調査研究は岡部、河、韓が実施し、韓国在住の成田真美氏の協力も得ることになっている。調査結果のテープおこしは大学院生が担当する。調査結果の分析と東西の比較研究(ドイツとの比較研究)は、共同研究組織のメンバー全員で取り組む。この計画に即して、旅費(国内・海外)と謝金が必要となる。また、文献研究も引き続き行う予定であるため、物品費も計上している。
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Research Products
(2 results)